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NettyLandかわら版7・8月号 「グローバルシティズンを育てる私学の教育」アンケート結果報告-1-

NettyLandかわら版7・8月号 「グローバルシティズンを育てる私学の教育」アンケート結果報告 実施時期:2022年4〜5月 回答:57校 NettyLandかわら版7・8月号で「グローバルシティズンを育てる私学の教育」を特集するにあたり、NettyLand会員校にアンケートを実施しました。 お聞きしたのは、「外国語学習に限らず、グローバルシティズンを育てる国際教育、生徒が世界に目を向けるきっかけとなる教科やプログラム。その概要」です。またそれを実現するための施設、スタッフなども併せてお尋ねしました。 探究活動やプログラムなど多彩な回答をいただきました。社会課題への問い、学習のモチベーション維持と連動した授業、課外活動などから、世界を見つめる生徒の姿が浮かんできます。「ボーダーを超えて協働する未来の推進役」を育てる教科やプログラムの概要をお伝えします。 その1―女子校― ◆大妻中野中学校・高等学校 ◇フロンティアプロジェクトチーム 学年縦断、希望者選択の課題解決型学習グループ:外部組織や大学とも連携し現代社会が抱える様々な問題を取り上げ、貢献できる活動をする。 ◇グローバルイシュースタディーズ 高校での学校設定科目授業。グローバルイシューズを取り上げ、グループをベースに、リサーチからプレゼンテーションまでの活動過程を通して学習をする。 ◇グローバル教育成果発表会、その他放課後のイクストラカリキュラムイベント グローバル教育成果発表会は毎年2月に開催。1年間のグローバル教育の成果を発表する機会。特に中3高1全員が参加するTEDスタイル英語プレゼンテーションコンテストの決勝ラウンドが会のメインである。グローバル教育専用施設ではないが、グローバル教育・留学・帰国生対応・海外大進学の拠点部署としてグローバルセンターがある。また、生徒はその都度希望者を募りチームを作って参加・運営をしている。 ◆神田女学園中学校高等学校 ◇ニコルプロジェクト 世界と社会に貢献するために、主体的に行動することが求められます。その力をつけるために、「ニコルプロジェクト」と称した探究型の活動を行っています。「ニコルプロジェクト」とは、社会のあらゆる課題の中から、自然(Nature)・文化(Culture)・生命(Life)に関わるテーマを設定し、自ら考えた疑問から今ある課題を見つけ、それについて仮説をベースにグループや一人で調べ、成果物(レポートなど)を作成する協働探究型の学習スタイルです。世界ではどうなっているのか。そんな疑問を持つきっかけになることもあります。 ◇トリリンガル教育 トリリンガル教育では、中国語韓国語フランス語から1つ選択肢学ぶものであり、常に世界に目を向けて活動しています。 ◆北鎌倉女子学園中学校高等学校 ◇グローバル研究 国際的に思考し活躍する生徒を育成するため、わたしたちがどのように異文化を理解しているか、また日本および日本人がどのように理解されているかを知る。教科の枠を取りはらい生徒自身が考える「国際問題」について一年間をとおして個人研究および小論文の作成に取り組む。その成果として、高校生を対象とした小論文コンテストへの応募も行う。また、「水」「病気」「子ども」等の普遍的なテーマ、日本と諸外国の接触を背景とした「外来語」等のテーマについて5、6人のグループワークおよび全体発表を実施する ◆湘南白百合学園中学・高等学校 ◇タラントリリア・プログラム オンライン教育プログラムEton XとVR留学体験ができる英語プログラムを英語の授業内で実施。日常のコミュニケーションやプレゼンテーションスキル、ディスカッションスキルなど、ユニバーサルなコミュニケーションスキルを英語でトレーニングする。最後はVR留学で実践。

NettyLandかわら版7・8月号 「グローバルシティズンを育てる私学の教育」アンケート結果報告-2-

その2―男子校― ◆鎌倉学園中学高等学校 ◇総合的な探究の時間 高校1年次に行う。5月に10個あるプログラムの中から1つを選び、それについて探究する。2月にプレゼンテーション用の動画を提出し、3月にプレゼンテーションを行う予定。 ◆巣鴨中学校・巣鴨高等学校 ◇SugamoSummerSchool(SSS) 2017年度より実施。様々な分野の第一線で活躍する英国人6~9名をイギリスから講師として迎え、少人数のグループでディスカッションや様々なアクティビティを行います。オックスフォード、ケンブリッジ出身の人格・教養を兼ね備えた講師と6日間寝食を共にし、英語を学ぶこと、使うことに対するモチベーション向上、広い視野・創造力・寛容さの獲得を目指します。 ◇Double Helix : Online 約3ヶ月のオンラインプログラムです。講師の先生方は、いずれもオックスフォード大やケンブリッジ大を卒業され、教職(中高・大学)や医療等、それぞれの分野の第一線で活躍されています。約3ヶ月のプログラム期間中、3月20日(日)の最終日に行われる連続3コマ(50分×3:間10分の休憩有り)のオンラインレッスンに向けて、歴史、医療、免疫学に関する3種類の課題を毎週こなしていきます(期間中は土日を除き、1日2時間程度の準備が必要になります)。今後、諸君達が必要とするであろう力を身につけられるよう、論文を読んだり、講義動画を視聴したり、自らのプレゼンテーションを作成したり、オンライン上で協働したりと様々な手段を用いて課題に取り組んでもらいます。Double Helixで求められる英語レベルは、ターム留学留学先の現地校かそれ以上になります。高いレベルの英語力が要求されることは間違いありませんが、Double Helixを通じて学びを一層深め、高次の思考力を獲得しようという気概のある生徒諸君が応募してくれることを期待しています。尚、今回のDoble Helixでは協働する力を磨くために、日本各地に散らばる高い志を持つ仲間達(市川、鷗友学園女子、駒場東邦、洗足学園、豊島岡女子学園、南山女子、広尾学園)と共に、オンライン通信技術を利用し学んで行きます。

NettyLandかわら版7・8月号 「グローバルシティズンを育てる私学の教育」アンケート結果報告-3-

その3―共学校(1)― ◆青山学院横浜英和中学高等学校 ◇異文化体験プログラム・総合学習 シアトルサマープログラムでは、青少年キャンプ、州立ベルビューカレッジでの特別講義等を行います。留学生と交流するグローバルデー、ターム留学(ニュージーランド)、姉妹校短期留学(オーストラリアの姉妹校。現地の生徒宅にホームステイ)、姉妹校生徒の受け入れを行っています。今年度からカナダへの1年単位認定留学と3か月留学も始まります。 総合学習では、福祉、平和、日本文化、国際理解、生き方などさまざまな体験を通して学んでいきます。作法や茶道も校内の茶室で学んでいます。 中3時の広島国内研修は聖書の授業で学んだ「人権」「平和」の大切さを体験します。 ◆桜美林中学校・高等学校 ◇コリア語・中国語 中学3年生から希望者は第二外国語として「コリア語」「中国語」が履修できる。韓国・中国にある姉妹校と交流。他にもインドの学校とのオンライン交流あり。 ◆関東学院中学校高等学校 ◇探究プログラム SDGsを中心に、ロゲイニングマップの作製などを実施。 ◇課外授業「考働学」 本校卒業生で大手広告代理店勤務の講師を招いて、「働く」という観点から、世界の事象について理解を深める。 ◇「聖書」の授業・礼拝 キリスト教のみならず、仏教、イスラム教、ヒンズー教など、宗教というものを世界の人々が大切にしているという観点を日常レベルから身につけていく。 ◇ベルリッツメソッド ベルリッツメソッドで、英語のスキルアップとともに、英語を用いて様々な文化・習慣などについて知識を深めていく。 ◇中国語・韓国語 課外授業として設置。アジア地域に目を向けている。 ◇イートンサマーカレッジ(今年度夏季実施予定) ◆共栄学園中学高等学校 ◇授業内でのオンライン英会話実施 中学3年生の英会話の授業を2つに分けて、半分はネイティブ教員との対面、残りはPCでオンライン英会話に参加して個別に会話を行っています。マルチメディアルームで実施しています。 ◆光英VERITAS中学校・高等学校 ◇オーストラリア Moruyo (モルヤ)ハイスクールとのオンライン交流や台湾上級学校とのペンパル交流 お互いの国の文化について会話やビデオを通じて教え合うことで、生徒の海外への興味や英語学習の意欲が高まりました。台湾ペンパル交流も英語でお互いの国の情報を交換し学校の様子などを、手紙を通じて知ることができました。オーストラリアの高校の先生から日本政府観光局に交流希望があり、本校に連絡が来ました。 ◆工学院大学附属中学校・高等学校 ◇中学における八王子プロジェクト、高校におけるSDGと紐づいたGlobal Projectツアー、MoG、Round Square校同士の交流など 八王子プロジェクトでは地元企業を訪ね、伝統と理解を深め日本を知り、GPツアーでは、SDGの各指標に紐づき海外での経験を深めます。また、MoGでは海外の社会起業の方と共同で現地でのプロジェクトを実施します。

NettyLandかわら版7・8月号 「グローバルシティズンを育てる私学の教育」アンケート結果報告-4-

その4―共学校(2)― ◆専修大学松戸中学・高等学校 ◇ネブラスカ修学旅行、ISAプログラム、オンライン英会話 学習活動の集大成として中学3年生全員が参加するアメリカ・ネブラスカ州への海外修学旅行は本校オリジナルのプログラムで、英語「で」学ぶ貴重な体験ができます。その1週間後には日本に留学しているアジア圏を中心とした留学生を本校に招き、オールイングリッシュで行うISAプログラム、9月には世界100ヵ国以上の英語講師との会話が楽しめるオンライン英会話がスタートし、楽しく継続的に英語の力を伸ばすことができます。 ◆千葉明徳中学校・高等学校 ◇総合・土と生命の学習 「土と生命の学習」では主に学校内の田畑(自然フィールド)で作物を育てる体験をしながら、1・2年生合同班でSDGsに関連したテーマに沿って「調べて・まとめて・書いて・発表する」取り組みを行っています。食糧問題や自然環境保全、教育などに目を向ける生徒が増えています。 ◇課題研究論文 2年生の後半から3年生にかけて行う「課題研究論文」では、それぞれが興味関心を持つ内容からテーマ(課題)を設定し、自らが考える「問い」に対しての「仮説」を立て、研究し、論文としてまとめる取り組みを行っています。身近なテーマで行いますが、国際的な問題に目を向ける生徒や、海外の先行研究をもとに課題を発見する生徒も多く出ています。 ◇英語・通常の授業/ベルリッツ英会話/Z会オンラインスピーキング 英語の授業は常に海外に目を向けるきっかけになりますが、通常の授業では授業の冒頭で英語の歌を歌ったり、レシテーションコンテストを行ったりすることが、外国語、ひいては外国の文化に興味を引くきっかけになり得ます。 プログラムとしては、英会話教室のベルリッツと提携し、ベルリッツ講師による英会話の授業を1・2年生に対し1クラス20名以内の少人数制で展開しているほか、3・4年次にはZ会のオンラインスピーキングを授業内で年間20レッスン提供し、個別の英会話体験ができるようにしています。ベルリッツ講座とオンラインスピーキングは一貫コース独自の取り組みになっています。5年次の研修旅行も一貫コースのみ行き先をハワイに設定し、現地高校生・大学生との交流が行われます。希望者を対象とした一貫生だけのボストン語学研修や、全員参加のTOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)の研修も数回組まれています。 (ハワイ、ボストン、TGGの研修についてはここ2年間未実施です) ◆東京農業大学第一高等学校・第一高等学校中等部 ◇English Camp ベルリッツやAchieve GOALと連携 ◆新渡戸文化中学校・高等学校 ◇オンライン英会話:オンラインにてフィリピンの同世代の学生と対話する。 ◇スタディーツアー:オンラインや実際に渡航(コロナ前)して、現地の同世代や大人とつながる。 ◇Happiness Bridge:オンラインで大人1対生徒2〜3人の小部屋をつくり、20〜30分の対話を行う。海外からの参加もあり。 ◆八王子学園八王子中学校・高等学校 ◇社会総合 総合コースリベラルアーツ系および文理コース進学クラスにおいて、2単位でSDGsをテーマに探究学習を行うものです。論文執筆とプレゼンテーションを実施します。 ◇学園祭における模擬店利益の寄付 本校では高校3年生が模擬店を出店するのですが、国際赤十字やUNICEF、UNHCRなどの信頼できる国際機関の中からクラスで寄付先を話し合い、利益のすべてをクラス単位で寄付します。自分たちが企画して得ることができた利益がどこに寄付をされるのか、各クラスが店舗に必ず提示するようにし、日本では未成熟な寄付文化の醸成、世界を見る視点を養っています。

特集 グローバルシティズンを育てる私学の教育-----私学で育つ! ボーダーを越えて協働する未来の推進役

 パンデミックや戦禍の前にたちすくみそうになる今こそ、グローバルシティズン(世界市民)が育つ、私学の学びに注目します。そこではどのように世界の課題に向き合い、未来の担い手を育てる教育が行われているのでしょうか。  グローバルシティズンとは、多様な国や地域、文化を構成する「世界」で生きる、自立した「市民」。他者を理解し尊重しあいながら協働する世界を実現する人々と言い換えることができるかもしれません。 今号では、それぞれの学校で実施されている教育プログラムの狙い、内容から、グローバルシティズンを育てる取り組みを考えます。 ***「SDGs」で学ぶ  語学教育や海外研修の有無は、私学の魅力の一面に過ぎません。その学びが、世界の未来とどのようにつながるかということに、真価が現れます。 たとえば、多くの学校が探究の時間やオリジナルプログラムで取り組んでいる、「持続可能な開発のための目標(SDGs)」との関わり方も一つの視点となるでしょう。  きっかけが17のゴールのうちいずれか一つへの関心だったとしても、探究して掘り下げていくうちに、ゴールは関係しあい単独では成り立たないことに気づく、そんなプログラムがあります。●桐蔭学園の模擬国連の活動をベースにした「15歳のグローバルチャレンジ」や●三田国際学園の「GlobalEducation」のように、教科の枠に縛られず現代社会の諸問題に取り組む探究的な授業も少なくありません。こうした授業は、一方的に教える授業ではなく、チーム型のPBL型で行われるのが特徴です。  また●芝浦工業大学附属が、SHIBAURA探究で「社会的課題を理工系の知識で解決する能力を養成する」とする、あるいは●清泉女学院の「倫理」が「キリスト教的価値観だけでなく宗教、思想、現代社会の諸問題などについてディスカッションする」といった学校ごとの特徴も、注目したいポイントです。  ●ドルトン東京学園の新校舎のような、建物自体が〝環境教材〟となる例も見逃せません。 ***学びからアクションを生む  探究の学びを自発的な行動に繋げていく生徒も少なくありません。●関東学院の高校生が探究活動で学んだ「多様性と共生」を横浜市のロゲイニングマップにアウトプットしたのは、そうした例のひとつです。●工学院大学附属で高校2年次に行われるGlobalProjectは、訪問国(地)の課題をSDGsと紐づけて解決するプロジェクト型の全員参加の研修です。同校の中学では地元八王子プロジェクトに取り組んでいるように、中高を見通したプログラムが組めるのは6年一貫教育の強みです。●東洋英和女学院の生徒有志の団体TEAMは、ミャンマーに寺子屋を建てる活動をしています。高1・2の探究活動で社会課題を学ぶことは自発的な行動を生む土壌になっています。これは、宗派は違えど同じくキリスト教を精神的土台とする●立教女学院の生徒が土曜集会から模擬国連活動に取り組むようになったこととも合い通じます。  ターム留学や、学校ごとの海外研修やイートン校サマースクールにみられる自分の生活圏から踏み出す体験も、グローバルについて考えるきっかけになるのは言うまでもありません。価値観が揺さぶられたり、文化の違いにたじろいだりすることもあるでしょう。それを中高時代に肌で感じることの意味は大きいはずです。この2年はコロナ禍により制限されてきましたが、徐々にできることが増えてきました。

ミッション校という選択 ++玉川聖学院・聖セシリア女子・立教池袋の取り組みから++

**************************************************************************************************** ある新聞の書評欄で、横山広美さんが『選べなかった命』(河合香織/文藝春秋)を紹介。現在、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構教授の横山さんの専門は、現代科学論・科学コミュニケーション分野ですが、日本の物理、数学、情報分野に女子生徒が少ないことに関心をお持ちで、早くから理系女子中高生のためのイベントにも力を注いできました。「サイエンスカフェ」でお話をお聞きした、という方も少なくないかも知れません。 横山さんは、小中高とカトリック校である雙葉のご出身。雙葉に限らず、カトリック校、プロテスタント校ではミッション校だからといって信仰を強制されたり、周囲はみな信者であったりということは決してありませんが、日常生活にお祈りがあり、命、神、宇宙といったことを考える環境が自然に備わっているということができます。文系だったという横山さんも、この環境に物理学を志すきっかけがあったようです。 さて、前置きが長くなりましたが、横山さんのこと、命のことを考えているうちに、かけがえのない自分に気づける環境、他者との違いを受け入れる心を大切にするミッション校の教育についてお伝えしたくなりました。 **************************************************************************************************** ++++++++++玉川聖学院で育まれる人をつなぐ力+++++++++ ■■■車椅子利用マップを作成■■■ 玉川聖学院はプロテスタントのミッションスクールです。その教育方針は、 1. かけがえのない私の発見 2. 違っているからすばらしいという発見 3. 自分の可能性、使命の発見 生徒が行動で示した教育の成果をひとつご紹介しましょう。 玉川聖学院高等部に在籍する生徒二人が、2017年、自由が丘商店街の車椅子利用マップを作成しました。自らが車椅子利用者である二人の、学校のある自由が丘が車椅子利用者に優しい街になってほしいと願っての、この行動がきっかけとなり、今年3月、株式会社ミライロ(※1)の「ブレーメンの調査隊」(※2)イベントに同校生徒約50名が参加しました。生徒たちが自ら自由が丘の街をフィールドワークして集めた情報をバリアフリー情報共有アプリ「Bmaps」(ビーマップ)に提供し、自由が丘の情報を充実させました。 ※1:株式会社ミライロは、高齢者、障害者などの多様な人々を対象としたユニバーサルデザインに取り組んでいる企業。 ※2:「ブレーメンの調査隊」は、全国各地で株式会社ミライロ社が実施している調査イベント。情報のバリアフリーを学ぶ講義やグループワークの後で、実際に車椅子に乗って移動しながら、バリアフリー情報を収集します。 ■■■総合科・人間学■■■ また、導入後25年経つ総合学習授業「総合科・人間学」も、玉川聖学院が大切にしているキリスト教的世界観に立ち、人間とは、人生とは、自分とは、を深く考える授業です。思春期や働くこと、女性として生きること、ときにそれらは老いを見つめることや死について考えることにつながることもあります。地球共生、人間社会、サイエンス、芸術・メディア、言語コミュニケーションの5つのテーマごとに分類された実践的体験プログラムともリンクして進路を考えるきっかけともなり、ポートフォリオとして夢につながっていきます。今年度の学校パンフレットに挙げられている体験プログラムの具体例は40にも上ります(※3)。なお保護者のための人間学講座も開講されており、多くの在校生保護者が参加。昨年から受験生保護者も参加できるようになりました(要申し込み)。 ※3:体験プログラム事例 アジアの人と会う/被災地の人に仕えるボランティアキャンプ/中東の危機を描く映画の自主上映/車椅子バスケの体験学習/外務省に高校生の声を届ける/韓国の姉妹校とのホームステイ交流など ++++++++++聖セシリア女子で育まれる感性++++++++++ ■■■「幸せな人」を作るオリジナルカリキュラム■■■ 聖セシリア女子はカトリック校ですが、女子修道会を母体とする学校ではありません。創立者の、カトリック精神を基盤とした女子教育を実践したいという信念のもとに創られた学校であり、校訓「信じ 希望し 愛深く」は新約聖書から採られました。 この建学の精神のもと、「幸せな人をつくる」ことを目指した教育が行われています。聖セシリア女子の考える「幸せな人」とは、「自ら人生を切り開くことのできる知性とそれを生かせる心をもって社会に貢献できる人」のこと。 6年の間に、「幸せな人」として生きていくための3つの学力(読解力・論理力・表現力)を育むカリキュラムの特徴に、学校が独自に設定できるオリジナルの「学校設定科目」が多いことが挙げられます。その一つ、イングリッシュエクスプレス(中2)は、歌、台詞は英語、踊りも学び、年二回ミュージカルを上演するというもの。英語芸術学校マーブルズの協力の下、生徒たちは英語とともに、自分を表現すること、仲間と協力することを学んでいきます。高校では、実践力育成のため「スピードリーディング」「リスニング」などを設置しています。さらに高3ではクロスカリキュラムとして、教養講座を実施。現在、「外国事情」「平和学習」「食生活」「環境科学」「自然科学史」「宗教」「女性史」「アンサンブル」「詩を読む」の9講座が開講されていますが、まさに異分野の学問をクロスする学際的な学びの場となっています。 ■■■自己理解と他者理解■■■ 確かな学力を育てると共に、心の教育が併行して行われます。 聖セシリア女子では、自分自身を知ること、他者を理解すること、お互いの違いを理解し個性を尊重しあう関係を築くことができるよう、構成的エンカウンターを導入しています。エンカウンターとは、ゲーム的なグループワークをとおして自分を素直に表現し、お互いを認め合う体験のこと。エンカウンターはキャリアプログラムの導入期に行われ、自分の行き方を考えるステップともなります。将来の夢、自分の適性、自己実現のためのキャリアプログラムにおいても、カトリック精神は大きな柱です。行事や部活動、福祉教育・・・、場面はさまざまでも、いつでも立ち返ることのできる精神に基づく、「自分の存在価値を見出し、社会に貢献する」価値観が貫かれていることは、ミッション校だからこそといえるでしょう。 写真左:玉川聖学院の取り組み 写真右:聖セシリア女学園の取り組み

大妻中野の帰国小学生英語講座見学記

大妻中野中学校・高等学校は、2016年から、帰国生クラスを発展させた、国内生、海外帰国生で構成する、グローバルリーダーズコース(GLC)を設置。また学校単独での海外説明会、シンガポール入試など、いち早く海外での募集活動も行い、在籍する帰国生は全体の1割を占め、海外での滞在国も30カ国に及びます。国際社会で活躍する人を育てるグローバル校としての独自の存在感を示し、立ち止まることなく前に歩み続ける大妻中野。今回は帰国小学生英語講座をお伝えします。 ----------------------------------------------------------- 11年目を迎えた帰国小学生英語講座 -----------------------------------------------------------  大妻中野中学校では11年前から、同校のネイティブ教師による帰国小学生英語講座を開いています。4月から翌年3月までの毎週土曜日の午前中約2時間、帰国小学生が海外で身に付けた英語を保持、そしてその力を伸ばすように、アクティビティと4技能のバランスを取って学んでいます。中には保護者が英語ネイティブというお子さんも。また年度途中、いつからでも参加可なので人数は変動しますが、今年度は6月現在、約50名が登録しています。 ◆4月、今年度の講座がスタート  今年度のキックオフは4月14日(土)でした。この日は19名が出席、うち7名が初めての参加、12名は昨年からの継続で、打ち解けた空気と、新しい仲間と出会う緊張とでやや固い空気でスタート。冒頭、帰国小学生講座と中学入試を経て入学した在校生が英語で歓迎のスピーチをしてくれる姿に、見学の保護者は何ヶ月か先のわが子の様子をイメージしているのかもしれません。  この講座で大妻中野は、入学してもらうことを考えているわけではなく、小学生たちには英語の保持や友人作り、保護者には帰国生を持つ親同士が知り合い、意見や情報、内面を共有することを願っていることは、宣伝臭のなさからも伺え、学年や地域を越えたプラットフォームになっているようです。  さて初回は、自己紹介ののち体育館に移動、ドッジボールを楽しむうちに初対面の固さが徐々に薄れてきて、初参加の子ども達の表情にも笑顔が出てきます。講座担当のWillie Vickers先生は、アメリカで社会を教えていた教師経験もあり、生徒のやる気を引き出すのがとても自然で、発言の多い子、少ない子両方に目配りしながら、全体をまとめます。第一回講座を終える頃には、子ども達は友達関係へ一歩踏み出したようでした。