特集

NettyLand 「SDGsアンケート」結果報告 ーその1ー

NettyLand 「SDGsアンケート」結果報告 実施時期:2021年5月 対象:私立中学校231校 回答:93校(回答率40.3%) アンケートは、「SDGsに関連する学習プログラム」の有無を質問。「ある」と回答した学校は約78%で、150近くのプログラムが上がりました。そのプログラムが取り上げるゴール(複数回答可)については、「特定のゴールはない」とする回答が最も多く、約半数に上りました。最も回答の多かったのは「ゴール2 飢餓をゼロに」(全プログラムの26%)ですが、次に「ゴール1 貧困をなくそう」と「ゴール15 陸の豊かさを守ろう」(同数)、そして「ゴール4 質の高い教育をみんなに」と「ゴール5 ジェンダー平等を実現しよう」と「ゴール12 つくる責任、つかう責任」(同数)が僅差で続き、「ゴール13 気候変動に具体的な対策を」も関心の高いターゲットゴールでした。 ただ突出したターゲットがあるというよりも、幅広い視野で多くの課題に目を向けている(課題が関連し合う)のがSDGsの学びであることも伺えます。 以下に、各校回答を掲載します。気になるプログラムや取り組みがあれば学校選びの際に調べてみると良いかもしれません。また、SDGsを“自分ごと”にするのは私たち一人ひとりの行動に委ねられていることにも改めて思いを致したいものです。

NettyLand 「SDGsアンケート」結果報告 ーその2ー

「NettyLand 「SDGsアンケート」結果報告 ーその1ー」より続く 「ある」と回答した学校のうち、「特にゴールを定めていない」「すべてのゴールを対象とする」と回答した学校とプログラムや、担当する部署などは下記の通りです。 ●跡見学園:SDGs探究旅行(将来構想プロジェクトチーム) ●アレセイア湘南:グローバル教育カリキュラム)(総合学習・当該学年の教師で担当) ●江戸川女子:探究活動的(調べ学習/2年の総合学習の時間・担任教員)、自分史ワーク(1年の総合学習の時間・担任教員論文ワーク)、3年の総合学習 ●大妻多摩:理社合同プレゼンテーションウィーク~SDGsを題材に(理科・社会科) ●大妻中野:フロンティアプロジェクトチーム(土曜日午後の希望者選択制の年間の学習活動。授業に準じる) ●かえつ有明:地歴公民科。サイエンス科  ●吉祥女子:SDGsプレゼン学内コンテスト ●聖和学院:国語表現、国際理解教育、探究プレゼン全校コンテスト、地域の防災・減災プロジェクトなど ●神田女学園:ニコルプロジェクト(社会等) ●共栄学園:総合学習発表会(総合学習/総合学習検討委員会) ●香蘭女学校:探究委員会。ラインデザイン室 ●栄東:SDGsを自分ごとに(社会) ●相模女子大学:マーガレットタイム(総合的な学習の時間/中学キャリア支援部担当) ●自修館:C-AIRプログラム(探究) ●実践女子学園:「未来デザイン」(ESD推進) ●品川翔英:Learner's Time (Learner部) ●芝浦工業大学附属:SHIBAURA探究GC(探究/探究用編成チーム) ●芝浦工業大学柏:課題研究(SS1、SS2、GS1、GS2/研究部)  ●淑徳:グローバル教育部 ●城西大学附属城西:JOSAI Future Global Leader Program(担当、教科は定めず、教頭主導のもと全学で対応中) ●聖徳学園:中学1年STEAM、総合高校2年SDGs(STEAM 総合と情報) 総合で国際支援プロジェクトに取り組み,情報とコラボレーション ●湘南白百合学園:家庭科。またSDGsについての任意団体がある ●城北埼玉:中学「新聞ノート」 ●清泉女学院:世界遺産×SDG(社会科世界地理) ●西武学園文理:SDGsを学ぶ(総合的な探究の時間・高校2年生全体。2020年度実施) ●青稜:ゼミナール授業の1講座・自然教室等々VCP:ボランティア ・ コミュニケーションプログラム(総合的学習/VCP推進委員会)

NettyLand 「SDGsアンケート」結果報告 ーその3ー

「NettyLand 「SDGsアンケート」結果報告 ーその2ー」より続く Q:学校として取り組んでいるものはありますか? ◆足立学園 ・ほぼ全ての教科や部署で取り組んでいます。※SDGsに取り組んでいるわけではなく、もともと取り組んでいるものが、SDGsに当てはまるという認識です。性教育:いのちの大切さや尊さを改めて気づかせてくれる授業。中2、3年生を対象に「いのちの授業」を行っています。去年度は講師に助産院の先生をお迎えし、「いのちの性」についてお話ししていただいています。高校のデートDV講座同様、性教育の一環として行っている特別講座ですが、いのちが生まれることのすばらしさや、誰もが愛されて育ってきたことを実感できる時間となっています。【5】 ・「救缶鳥」プロジェクトに参加:賞味期限が近づいた未使用のパン缶詰「救缶鳥」を回収し、飢餓に苦しむ国々へ届ける「救缶鳥」プロジェクト。本校はこれに賛同し、備蓄用食料として「救缶鳥」を採用しています。【2】 ペーパーレス化への取り組み:印刷物を減らし、できるだけ電子に移行しています。【7・15】 ・学園祭でバザーを行っています。:制服のリサイクル販売も行っています。ごみの分別によるペットボトル・キャップリサイクルも行っています。【12】 ◆跡見学園 ・キュロットタイプやパンツタイプもあるジェンダーレスな制服。【5】 ◆桜美林 ・会議資料をできる限りペーパレスでできるようにしています。【7・12】 ・学習活動における様々な場面でのジェンダーレス化 ◆鴎友学園女子 ・ソーラーパネル ◆大妻多摩 ・貧困地域に在住している子ども数名に対して、生徒会の募金活動で継続的支援を実施【4】 ・中学3年生全員を対象に、3日間SDGsワークショップを実施。【1・2・5・7・10・11・13・14・15】 ◆大妻中野 ・特定のものは決めていません。ソーラーパネルによる太陽光発電。ペットボトルキャップの回収、書き損じはがきの回収、古着の回収(ユニクロ服のチカラプロジェクト)、制服リサイクル、などです。 ◆かえつ有明 ・環境に配慮したエコスクール(雨水や地中冷熱の利用)【7】 ◆春日部共栄 ・女子の制服にスカートのほかスラックスも選択可能に。リボンかネクタイの選択も可。【5】 ◆神田女学園 ・資源ごみのリサイクル【12】 ・パンツスタイルやネクタイを取り入れる【5】 ◆共立女子第二 ・開発途上国の女子教育の支援、開発途上国への古着支援や募金活動などの生徒会活動【1・2・5・10】 ◆香蘭女学校 ・制服のスラックス導入。ソーラーパネル ◆サレジアン国際学園(現 星美学園) ・ジェンダーレスな制服の導入を検討中 ◆自修館 ・授業、LHR、長期休みの課題等でSDGsとのつながりを意識的に取り入れています。その結果、社会に山積する課題に目を向けたり行動したりしたいという生徒が多く、グローバルユース国連大使(少年少女国連大使)などを目指す生徒が毎年おり、昨年度までで5名、今年度は2名が研修と活動を行う予定です。 ◆静岡聖光学院 ・食と教育(F×ED)プロジェクト:授業においての学びと食や料理など実生活に結びついた学びの模索と創造。生徒による食に関連する商品企画販売活動。男子校による料理の推進 → 食におけるジェンダーの模索と創造。 【4・5・12・15】 ・SDGsをベースにした国際交流活動【17】 ・コンポスト活動【15】 ◆自由学園男子部・女子部 ・ジェンダーレスな制服として、現在女子部は「学校にふさわしい服装なら可」と生徒が話し合い決めた。そのため、スカートの生徒もいればスラックスの生徒もいる。 ◆聖徳学園 ・SDG’sをテーマとしたシネマアクティブラーニングなど。学校全体で「これ」と決めて取り組んでいるものはありません。生徒それぞれがゴールを考えて取り組めるようになるのが理想と考えて指導しております。 ◆湘南白百合学園 ・フィリピンのスラム街に住む子供たちへの支援【1】 ◆清泉女学院中学高等学校 ・学校全体で節電やペーパーレスに取り組んでいます。【13】 ◆西武学園文理 ・ゴミの削減(コロナ対策と関連させ教室内のゴミ箱を撤去し、ゴミを大幅に削減した 2020年度実施)【12】 ◆成立学園 ・女子の制服でパンツも選べるように導入しています。【5】 ◆青稜 ・制服・リサイクル・有機栽培等

学習との両立を目指し、サッカーを通じて豊かな人間形成を ~桐蔭学園・桐光学園・日本大学藤沢・横浜創英~

新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から無観客試合で実施されている『第99回全国高等学校サッカー選手権大会神奈川県予選会』は、桐蔭学園・桐光学園・日本大学藤沢・横浜創英の私学4校が準決勝に進みました。 今シーズンは、関東大会・インターハイが中止となり、例年3月より実施される神奈川県リーグも9月開幕となるなか、各校、徹底した感染症対策のもと工夫をしながら質の高いトレーニングを続け、全国高校サッカー選手権に臨んでいます。 準決勝2試合から感じた私学の魅力をお伝えします。 【相手を思いやる気持ち】 第1試合は、昨年の選手権大会神奈川県予選会・決勝で対戦した桐光学園と日本大学藤沢。両チームにとって絶対に負けられない相手でしょう。 前半は、桐光学園がコーナーキックから先制。日本大学藤沢も攻めの姿勢を見せるも、桐光学園の固い守備で得点が奪えずそのまま前半終了。 後半は、硬直状態が続くなか、日本大学藤沢のパスが繋がり始め、ゴール前へと持ち込みチャンスをつくります。すると、日本大学藤沢が得意な連携プレーからゴールを決め、同点に。その後は、一進一退の攻防が続き、そのまま延長戦へ突入しました。 延長後半、日本大学藤沢がゴール前の混戦から得点を奪い逆転。その直後、桐光学園が素早い攻撃からゴールを決め同点に追いつき、決着はPK戦へともつれ込みます。 PK戦を制したのは桐光学園。両校の選手の技術はもちろん、チームの一体感、逆境でも粘り強くチャレンジを続ける姿勢、サッカーの魅力が詰まった見応えのある素晴らしい試合でした。 第2試合は、昨年の神奈川県リーグ3位の桐蔭学園と4位の横浜創英の対戦です。 前半、桐蔭学園がチャンスを確実に決め、先制。後半、横浜創英は果敢に攻撃を仕掛けますが、桐蔭学園は集中を切らさない堅いディフェンスで得点を許しません。横浜創英は反撃を試みますが、桐蔭学園は気迫のプレーで守り抜き試合終了。激しい戦いを制したのは桐蔭学園でした。 神奈川県ベスト4に進む選手たちは常に切り替えが早く、審判の判定に不満を表す場面は少なかったです。自分が次にできることを考え行動する。気持ちの切り替えの早さやひたむきな姿に感服しました。 また、日本大学藤沢の選手が足を痛めピッチで動けなくなると、対戦相手の桐光学園の選手がすかさず声を掛けに行くなど、何度となくこういったフェアプレーの精神がみられました。ライバル同士絶対に勝ちたい試合だからこそ、相手を思いやる気持ちを忘れずに臨む、という姿勢を感じ取ることができました。 惜しくも準決勝で敗れた日本大学藤沢。試合終了直後、悔しい気持ちを抑え、ここまで支え続けたマネージャーに声を掛ける選手の姿が印象的でした。一般の観客のいない無観客試合でしたが、スタンドではサッカー部員と保護者が選手達の活躍を静かに見守っています。「最後の挨拶はちゃんとやろう!」と声を掛け合い、スタンドに向けて整列する選手達。 この美しい姿に、スタンドのサッカー部員と保護者は心が熱くなったことでしょう。 11月28日に行われる決勝戦は、桐光学園と桐蔭学園の対戦です。全国制覇のスタートラインに立つための神奈川県代表が決まります。

「なぜ」から生まれる感動体験 私学の理系教育

宇宙飛行士、医者、科学者・研究者、大工・建築士、料理人…。子どもたちの夢は、サイエンスの世界にも大きく広がります。今回は、そんな夢を叶える力を育む私学の学びに注目します。 ************************ 「不思議」を解き明かしたい気持ちを大切にする ************************ 見渡せば、科学は私たちの日常にあふれています。高輪ゲートウエイ駅は駅舎のデザインや、ロボット・無人店舗などの最新テクノロジーが話題。 京都大学数理解析研究所の望月新一教授が数学の重要未解決問題「ABC予想」を証明。 空には、ストロベリームーンや部分日食。国際宇宙ステーション「きぼう」が東京上空を通過。「富岳」が世界一に。新型コロナウイルス、その災禍との闘い。 教育の面では、理系人材育成の必要性も叫ばれ、複雑化する社会の課題を解決する力を育てるSTEAM教育へも高い関心が寄せられています。STEAM教育は、科学(Science)、技術(Tecnology)、工学(Engineering)、芸術(Arts)、数学(Mathematics)を総合的に学ぶことと定義され、私学でも様々な取り組みが行われています。またSTEAM教育を謳わずとも、実験・観察を通して身の回りの「なぜ」を探究し、思考力を育てるのは、私学の理系教育の特長です。 ************************ 実験・観察を重視する ************************ 理系科目の学習サイクルは、「課題に気づき→仮説を立て→手にとって観察、また粘り強く実験→データを収集し検証→結果の発表」の繰り返しです。この時、本物に触れることは、知識を定着させるだけでなく、「感動」をもたらします。 桐朋では、各種実験室はもちろん、太陽観測所や天体ドーム、プラネタリウムなどの充実した施設(写真中)を活用した実験・観察重視の理科の授業が行われています。東北修学旅行で訪れる岩手県田老町の防潮堤見学は、東日本大震災前から続いていたように、本物に触れる姿勢をゆるがせにないのが桐朋らしさ。中学開校以来、プログラミング授業を行なっている東京電機大学では実験道具を手作りし、自分の「実験BOX」を持つことから学びがスタートします。工学系教育に存分に強みを発揮するのは、恵まれた施設や大学との連携も魅力の芝浦工業大学附属(2021年より中学共学化)です。ものづくりの基礎となる数学やテクノロジーだけでなく、STEAM教育の充実を自認するだけに、アートもおろそかにしません。 鷗友学園女子のオリジナル実験書には、理科の各分野は自然科学という大きな枠の中で体系的につながっていると言う〝哲学〟が貫かれており、卒業後も手元に残しておく生徒も少なくありません。 獨協、東京家政大学附属、ドルトン東京学園には生徒が作った本格的なビオトープがあり、環境教育の体験的な学習の場となっています。写真右は、ドルトン東京のSTEAMフェスの一コマです。 *********************************** 理系教育・進学に力を入れるコース・クラスや、オリジナルのプログラム *********************************** 理系教育に力を入れるコース・クラスを編成している学校もあります。理系科目やプログラムを重視し、理系進学にも力を入れているのが特徴です。8ページの実践例をご参照ください。 次に、各校オリジナルのプログラムや活動を見てみましょう。 カリタス女子では、「Tamalogy タマロジー」で、多摩川や多摩丘陵をテーマに学んでいます。荒川のフィールドワークを行なっている栄東の理科研究部は、論文発表や地域貢献にも力を入れています。共立女子第二の「ファーム教育」、東京純心女子の「労作」、恵泉女学園や鷗友学園女子の「園芸」も、学校の教育の柱を担っています。 日本工業大学駒場で実施しているサイエンスウイークは、3日間連続して理科実験と観察を行います。グループごとにテーマを決めて取り組む、生徒に人気のプログラムです。文京学院大学女子は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定期間(2012〜2017)に「科学探究カリキュラム」を開発し、学際科学、SS数理演習など、教科や地域の壁を越えた取り組みを続けています。文部科学省が「先進的な理数教育を実施する高等学校等」として支援するSSH指定校は、各々研究課題を設定し(次ページ参照)、個性豊かな理数教育が行われています。 数学という科目に注目してみましょう。東邦大学付属東邦ではオリジナルプリント「数学トレーニングマラソン」を用い数学の力を鍛えています。本郷では伝統的に、「本数検(数学基礎学力検定試験)」という独自の数学検定試験を始業式の翌日に行ない切磋琢磨。巣鴨では、中3と高1に、数学の成績による選抜クラス「数学クラス」(入れ替えあり)を編成しています。

「未来を生きる人」を育てる私学。自分を見つめ、将来や生き方を考える進路指導

「大きくなったら、何になりたい?」。 そう聞くと、瞳を輝かせて夢を語る子どもにも、伏し目がちに「わからない」と答える子どもにも、等しく未来は訪れます。しかし、「どのように生きるか」を考えた先に見えてくる未来は一人ひとり異なり、自分で変えていけるものです。 今号では、そんな「進路」を切り拓く力を身につける、私学の進路指導を考えます。 ***************************** 「何か」を感じる体験 ***************************** 十代の大半を占める中高時代。知識が増えるとともに、その知識を生かす力も身につけていく時期です。この心身ともに大きな成長を見せる6年間に散りばめられたプログラムは、一人ひとりの進路に、とても大きな役割を果たします。 様々な社会の課題に、〝自分ごと〟として向き合うこともあるでしょう。その時感じる、「誰かのためになりたい」、「貢献したい」という思いもまた、体験から得られる尊い心の核となるかもしれません。 フィールドワークや探究活動といった学校外での活動でも、事前学習、現地での体験、事後のレポートや発表(体験の共有)という一連のサイクルが、より深い思索へと生徒を誘います。 国内外の研修で訪問した土地・国の歴史や文化、あるいは自然環境などに触発されたことをきっかけに、将来の夢が形になるといったことは、その好例でしょう。 進路を考えるきっかけや時期は人それぞれですが、何かを感じた時、「何のために勉強するのだろう」、「大学で何を学びたいのだろうか」を見つめ、具体的な夢が見え始めます。体験という「点」が「線」となり、輝く「面」を形作って行くことでしょう □□■体験のキーワード■□□ フィールドワーク/出会い/言語化/共生/多様性/コミュニケーション/他者理解 □神奈川学園:〝Kanagawaプロジェクト〟は、学年ごとのテーマに取り組みながら、「社会」と「国際舞台」に出ていくためのプログラム □足立学園:弾力的なコース制と「いのちの授業」や「グローバル教育プログラム」などが将来の道を見出すサポートになる ***************************** 進路実現のための学力育成 ***************************** 中高一貫校を志望する皆さんは、学部や学科などはさておき、大学進学はお考えになっているのではないでしょうか。 私学では、生徒個々の進路実現のための学力を育てています。  その一例が、6年という時間を2年ずつ、基礎期、応用期、発成長という三段階に分けて、学習プロセスを組み立てる考え方です。また明確に分けていなくとも、長期的な視点で成長段階に応じた対応が取れるのも、中高6年一貫教育の強みです。 学習習慣を身につけ、学ぶ意欲を喚起しながら基礎的な学力をしっかり養う。その土台の上により深い理解を積み重ねていくことは、自分の将来を考えることにつながります。 教科や探究活動を通した体験も、好奇心を刺激します。それぞれの教科や教科間の連携が総合力を養ってくれるでしょう。 また毎日の学校生活における、様々な学習サポートも私学の特長です。 大学受験を目前に控えた高校3年生になると、実戦的な講習や講座での大学受験対策も広く行われています。予備校に通わず、学校の勉強を中心に据えて大学合格を果たしたという話も、珍しくありません。 □□■学力育成のキーワード■□□ 基礎・応用・発展/学習習慣/探究/教科横断/興味・関心/刺激 □佼成学園:チューターが自習室(毎日朝7時から夜8時まで開室)に常駐。チューターの幅広いフォローは公式ツイッターからも伺える □啓明学園:今年度から始まった探究授業「Mathクエスト」は、数学と他教科とのコラボ。例えば、数学と音楽で「ピタゴラ音律」(中1) 写真左:青稜は自習室「Sラボ」で自学自習のサイクルを身につける 写真中:湘南学園は「人格形成のためのカリキュラム」として独自の「湘南学園ESD」に取り組む 写真右:獨協の学校案内には中高6カ年の成長が示されている

探究から行動へ。地球規模の課題を解決する力を育てる、私学のグローバル教育

この春、私たちは新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大によって長期にわたる休校に直面し、学びを止めないことの重みを実感しました。このパンデミックは、世界の「グローバル化」がもたらす課題、しかも誰もが経験したことのない「答えのない課題」を浮き彫りにしました。同時に、「未知の課題に立ち向かう力」を養い、「未来を生きる人材」を育てる教育の真価が問われています。NettyLandかわら版7・8月号では、世界を意識した今だからこそ知っておきたい、私学のグローバル教育を見ていきましょう。 □□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■ 他者を理解する、課題を考えるツールとしての外国語 □□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■ 宇宙飛行士、大西拓哉さん(聖光学院出身)、星出彰彦さん(茗渓学園出身)が国際宇宙ステーションに搭乗し、国を超えたチームで活躍した姿に、宇宙への夢をかき立てられたお子様もいることでしょう。また、新型コロナウイルス関連のニュースを見れば、国際機関や海外の医療機関で働く日本人や、さまざまな国の人々の姿が映ります。世界中のアスリート、アーティストたちは、SNSなどで国や人種を越えてメッセージを発信。グローバル社会において「ことば」、特に英語が、異なる環境や文化を持つ人と人が協働する際に必要なもの、あるいはお互いを理解するツールであることを、今さらながら痛感します。 私学の英語教育では、英語の文章を読んだり、会話したりすることに加え、英語を使いディスカッションをするところまで深める学習が展開されています。 聖学院は、英語学習歴に応じたカリキュラムやグレード別指導に定評があり、素材にも社会的出来事を扱うなど、ツールとしての英語習得を目指します。聖ドミニコ学園のインターナショナルコースでは、数学、理科も英語イマージョン。美術と音楽を英語イマージョン教育で行うのは佼成学園女子です。同校のSGコースには、お茶の水女子大学フンボルト入試に合格という成果を示した卒業生もいます。教科学習と英語学習を組み合わせたCLIL(クリル)という学習方法を導入しているのは、英語を「生きるための力」と説く関東学院六浦。また横浜女学院でも、CLILで国際問題を取り上げることが、様々な課題に当事者意識を持つ機会にもなっているようです。神田女学園や和洋九段女子(グローバルクラス)、鷗友学園女子ではオールイングリッシュで英語の授業が行われており、知識ではなく、英語で考え発信できる英語力を育てます。 外国語履修において、第二外国語を設ける学校もあります。例えば英語とともに多くの国際機関の公用語である仏語を学べるのは、暁星や白百合学園、カリタス女子、大妻中野です。日本語教育を行うフランスの高校と、仏語教育を行う日本の高校との間で交換留学を行うネットワーク「コリブリ」を通した日仏間の交流や、学校の枠を超えた国内の交流が行われ、視野を広げています。また、アジアに視点を起き中国語や韓国語・朝鮮語などを選択科目で学べる私学もあります。神田女学園の場合、日本語・英語に「教養としての第三言語」(中3からフランス語・中国語・韓国語のうち一つ選択)を加えた『トリリンガル教育』に取り組んでいます。 □□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■ 夢や志、好きなことを深めるクラスやコース □□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■ クラス名やコース名が、各校のグローバル人材育成の取り組みを象徴する学校も少なくありません。 2020年スタートの大妻多摩「国際進学クラス」、昭和学院「インターナショナルアカデミー」、意欲的な取り組みが活発に生まれています。これまでも、昭和女子大学附属昭和「グローバル留学コース」、広尾学園「インターナショナルクラス」、大妻中野「グローバルリーダーズコース」、和洋九段女子「グローバルクラス」、国学院大学久我山女子部「CCクラス( Cultural Communication Class)、淑徳「留学コース」(高校から)など、多彩なコース・クラスが支持を得てきました。2021年には、佼成学園でも「グローバルコース」がスタートします。 こうした動きに先鞭をつけたのは、東京女学館の「国際学級」でしょう。現在は語学教育に特化し、世界各国からの帰国生や国内で育った生徒、様々な背景を持った生徒でクラスを構成しています。 □□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■ 世界標準の教育システムで、世界中とつながる □□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■ 国際バカロレア( IB)校として世界標準の教育を実践するのもグローバル教育の一例でしょう。国際バカロレア機構が提供するIBは、グローバル人材に育つ10の学習者像(※1)を示しています。DP(※2)履修後、試験を経て国際的に通用する大学入学資格を得ることができます。認定校は、英語学習はもちろん、世界を意識したプログラムを持っています。MYP(※3)・DP認定校である玉川学園は伝統の全人教育とIB教育を融合した「IBクラス」を設置しています。同認定校の昌平は、世界を意識したプロジェクト学習が探究の場となっています。聖ヨゼフ学園(2020年共学化)は昨年7月に、東京家政大学附属は昨年9月にMYP候補校となり、認定に向けて準備を進めています。茗渓学園は、2016年のDP認定を経て2017年より「DPコース」をスタート。「日本語DP」を行ってきました。そしていよいよ2022年には「オールイングリッシュDPコース」を開設します。 ※1 10の学習写像とは、「探究する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念をもつ人」 「心を開く人」「思いやりのある人」「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」 ※2 DP=Diploma Programme(ディプロマ・プログラム)。IB Diploma(国際バカロレア資格)を取得。16歳から19歳対象 ※3 MYP=Middle Years Programme(中等教育プログラム)。11歳から16歳対象 2015年に文化学園大学杉並が、カナダ・ブリティッシュコロンビア州と提携して導入したダブルディプロマ(DD)プログラムは、日本と提携先の2つの高校の卒業資格が得られるというもので、同校 DDコース一期生の国際基督教大学、早稲田大学国際教養学部、海外大学の合格実績でも注目されました。現在は中2からDD準備コースが設置されています。2020年には、神田女学園がアイルランドと、麹町学園女子がニュージーランド3校、アイルランド1校と提携して、DDプログラムを始動します。同じく2020年にDDコースをスタートさせた国本女子は、カナダ・アルバータ州と提携して同じ校舎の中にKunimoto Alberta International School(KAIS)を置き、カナダに留学しているのと同じ環境でのDDプログラムを導入しました。新学期はオンラインでのスタートになりましたが、「新入生たちは、自らは責任ある行動をするとともに、まわりの人への感謝や思いやり、そして、人と人、国と国との協力関係が大切であることを考えたようだ」と、学校も一期生に期待しています。 世界的な組織や学校同士の交流で、同世代とつながることは、いまの自分への刺激になり、将来の宝物となる経験を得ることができます。そうした機会を得られる私立学校同盟、「ラウンドスクエア」に加盟しているのは、玉川学園、八雲学園、啓明学園、工学院大学附属です ラウンドスクエアには、国際社会で活躍できる若者の育成を目指す世界50カ国以上から180校以上が加盟しており、「国際理解」「民主主義の精神」「環境問題に対する意識」「冒険心」「リーダーシップ」「奉仕の精神」を理念に掲げています。加盟校はそれぞれ、国際会議への出席や国を越えた同盟校間の交流を行っています。今春の休校中に啓明学園は、ラウンドスクエアが開催した「Zoom Postcard Around the World」に参加し、アメリカ、カナダ、コロンビア、ペルー、ドイツ、イギリスの高校生たちと、それぞれの国の現状と、Stay homeの過ごし方を発表し合いました。 また、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の理念に沿った取り組みや加盟校の交流を行う「ユネスコスクール」に参加している首都圏の私学は、麗澤、国際学院、八王子学園八王子、湘南学園など26校(2019年11月現在)です。 

生徒が変容する、巣鴨サマースクール(SUGAMO SUMMER SCHOOL)

巣鴨サマースクール(以下SSS)。イギリス人トップエリートを講師に迎え、英語によるレッスンが6日間にわたって行われます。それは英会話研修ではなく、ましてや勉強合宿でもありません。もちろん国際交流行事でもありません。希望者が多く抽選になる人気プログラム。そんなSSSの魅力に迫るべく、4日目に現地を訪れました。 【第3回 巣鴨サマースクール(SUGAMO SUMMER SCHOOL)概要】 期間 2019年8月6日〜8月11日 場所 巣鴨学園蓼科学校 他 参加者 50名(巣鴨中学校2・3年生各20名、高校1年生10名)     希望者から、各学年英語の成績上位者5名の参加を確定した後、     抽選で約40名を選出 費用 16万円 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 「イートン校サマースクールを国内で!」の思いでスタート □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 巣鴨は首都圏の男子校としては唯一のイートン校サマースクールに招待されている学校で、2002年から継続して参加しています。 イートン校は、英国一の名門校とされる、全寮制の男子パブリックスクール(私立の中等教育学校)です。同校が主催するサマースクールは、夏休みの約3週間にわたってイートン校で行われ、巣鴨生を始め日本の中高生も参加しています。参加校に提供されるプログラムは同一で、オックスフォード大学やケンブリッジ大学を卒業した講師たちによるレッスンや、現地での様々な体験に満ちた3週間を過ごします。 さて、イートン校サマースクール参加校でありながら、なぜ巣鴨は国内でのSSSを立ち上げたのでしょうか。 イートン校サーマスクールは、費用、海外渡航、時間など高いハードルがあります。そのため限られた人の体験となっていることをもどかしく感じていた国際教育部部長岡田英雅先生が、日本でオリジナルのサマースクールを作れば、もっと多くの生徒が参加できるはずだと考えたことがSSSの「種」でした。巣鴨に撒かれた岡田先生の「種」が、オリー先生というダイレクターを得てSSSとして始まったのが2017年夏。それ以来、毎年校内選考を経て、3年間で150名近くの生徒が参加してきた人気プログラムです。定員は、初年度は40名でスタートしましたが、2年目からは、少しでも多くの生徒にチャンスを与えたいと宿泊先をやりくりし50名に増設しています。 ところが今、SSSの魅力を伝えようとすると、人数のほか、目に見える「数字」や「形」がつかめないのです。現場に行くと、「今年、念願の参加」や「2回目です」という参加者もいて、熱気に充ち溢れているのに。 では、SSSには「何」があるのか。見学はわずか1日、全体のごく一部でしたが、あれから日が経つにつれ、参加した生徒や送り出した保護者の数だけ異なる答えが返ってくるのではないかと思えてきました。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ SSSを特別にする講師陣 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ SSSを特別にしているのが、献身的な講師陣です。2017年から続けての参加や2回目の参加など今年は8名。全員、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学を卒業し、現在は様々な分野の第一線で活躍する若手のイギリス人。それぞれの職業、場所で責任ある大きな仕事を任されている立場の方々ばかりです。 *オリー先生(オックスフォード大学卒。起業コンサルティング会社勤務)はSSSのダイレクター。講師陣を束ねます。 *ベン先生(オックスフォード大学卒。英国有数の法律事務所勤務を経て、現在は日本語の翻訳家)が教えるのは、[Superheroes](コミック)、[crest/coat of arms](紋章)。 *エミリー先生(オックスフォード大学卒。世界規模で展開する広告代理店勤務。セミプロの歌手・俳優の顔も持つ)は、[Drama]を担当。 *ジャック先生(オックスフォード大学卒。エンジニアとしてチェルシースタジアム建設に従事。元バタフライ英国代表)は、[Sport in the UK][Architecture and Landmark]。 *ノア先生(オックスフォード大学卒。イギリス政府勤務)の[Tea Ceremony][Brexit Debate]は、生徒に大人気。 *サミー先生(オックスフォード大学卒。イギリス政府勤務)は[Music][ Geography of the UK]。 *トミー先生(オックスフォード大学卒。外交官を経て内閣官房勤務)のテーマは、[Politics][Films] *トリスタン先生(ケンブリッジ大学卒。ウエリントンカレッジ歴史科教諭・寄宿舎副寮長)は[What makes Japan Japanese?][Why no female emperors?]と問いかけるレッスンを展開。 オックスフォード大学、ケンブリッジ大学という名前が参加のきっかけとなることもあるかもしれません。でも、それだけで、生徒の口からこんな言葉が出てくるでしょうか。 「あの先生に会いたくて、また参加した。再会を待ち焦がれた」 「講師の皆さんの優しさがにじみ出る人格に魅了された」 そこには、何かあるはず。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 一日は、濃く、長い。5分もゆるがせにしない。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ SSSのレッスンは、立科白樺高原ユースホステルと、そこから車で5分ほどのところにある巣鴨学園蓼科学校の2カ所で行われます。生徒は、中学2年生・3年生混合40名4クラス(RADIOHEAD /BEATLES/OASIS/COLDPLAY)、高校1年生10名1クラス(LED ZEPPELIN)と名前にも遊び心が覗くクラスに分かれます。どのクラスも、講師8名のレッスンを必ず受けますので、スタッフ泣かせのパズルのような時間割は、生徒にとってはワクワクドキドキの連続。 一方、講師陣の一日は、本日の確認、レッスンの合間には生徒の様子の共有、進め方のアドバイスなども行われ、テーマに沿った屋内でのレッスンのほか、屋内外でのART&SPORTS。夕食後には生徒が1日の出来事を記すDIARYや、合唱などを楽しむEVENIG ACTIVITIESを行い、夜にはDIARYのチェック、レッスン振り返り、という毎日。蓼科とはいえ、8月は夏の暑さも本番。そんな中でも終日、そして毎日、生徒のためを考えた精力的なレッスンが行われていることに驚きを禁じえません。 このレッスンこそSSSの真骨頂。 まずオリー先生と岡田先生がスカイプやメールなどのツールを使い、年明けすぐに夏のSSSについての話し合いスタート(実のところ、前年のSSSが終わる時には、講師の皆さんそれぞれの心には来年がイメージされるとか)。参加してくれる講師が決まり、テーマも定まってくると、レッスンの組み立て、6日間の構成・・と話し合いが続きます。 各人の得意分野で行うレッスンも、テーマ設定やどう組み立てるかの根底には、必ず巣鴨生に何を伝えたいのかを据え、ディスカッションしながらプログラムに落とし込んでいくことから始めるので、自ずとオリジナルの内容となっています。今年のトリスタン先生のレッスンテーマ、「なぜ、女性の天皇は認められないのか」は、日本史の山崎大輔先生も加わり議論を重ね、生徒と「なぜ」を考えるプログラムとなりました。 またSSSには、各講師が自分の人生を語る[Motivation Curve]というレッスンがあり、始めに近い段階のレッスンとして概ね2日目までに組み込まれます。イギリス人エリートたちが次々語る、自らの人生の浮き沈み、成功と挫折。14〜16歳の生徒は聞きながら「失敗してもいいんだ」と感じるとともに、英語だけのレッスンへの緊張が少しずつ解け、次第に講師の人柄の虜になっていく時間でもあるようです。 1日の終わり、夕食後にその日を振り返り、英語でDIARYを書きます。日を追うごとにその文章量が増えていくと言います。上手に書こうとか正確に書こうとかいう気持ちよりも、何をしたか、どう思ったかを書き残したい思いが勝ってくるのでしょう。 では、生徒をそのように変えるレッスンとは? エミリー先生のDRAMAは、School of Rockをクラスで演じるというものです。見学したのは中学2年生のクラス。まず感情を表す言葉を生徒から引き出し、黒板のマトリックス表に書き込んで行きます。その際に、エミリー先生は、その感情そのものを演じます。表情だけでなく、姿勢にも、足の踏ん張り方から指の先の伸ばし方まで、瞬時に全身が感情で溢れる、まさに俳優。さて生徒はというと、隣り合う生徒同士で感情をぶつけ合う練習をしますが、初めから殻を破れる生徒ばかりではありません。でもエミリー先生は、全く焦るそぶりは見せません。むしろそれさえ楽しむような風情も。 「演技が難しいことではないと気づいて欲しいと思っています。面白いと感じるものを見つけてくれれば」 徐々に演じることに慣れてきたら、振り分けられた役ごとにセリフを音読。その際には抑揚や強弱などのアドバイスもあれば、一人が発音に苦労する単語は全員で確認する場面もありました。なかなか感情を込めたり、動作をつけたりすることができない状況を打ち破るのは、生徒自身です。誰かが声を大きく張り出し、大きな動きを見せます。“Really good !” 後ろの方でモジモジしている生徒も、前に出ようと足が動き始めます。 “You are very cute actors.” ためらいがちに恥ずかしげに。“Perfect!” 確かに目線が上を向き、口を大きく開き、表情が微妙に変化します。 「予想もしないリアクションが返ってきた時の喜びが好きです。生徒が自分の境界を広げる手助けをしたい、それがSSSに来たいと思う一番の理由です」というエミリー先生が、生徒のかすかな変化を瞬時に捉えて発する言葉は、まるで魔法のよう。

4つのプログラムを知れば、今の清泉女学院が見えてくる

皆さんは、清泉女学院というと、何を思い浮かべますか。女子校、カトリック校、豊かな自然環境、あるいは海外でも力を認められる音楽部(合唱部)、はたまた社会で活躍する卒業生の顔が頭に浮かんでくるかもしれません。では、「今の清泉女学院」というと、何をイメージするでしょうか。 私学には、それぞれに教育理念があり、それを具現化する熱い思いがあるもの。清泉女学院にも、大切にする価値観があり、学びやプログラムに多くの挑戦と情熱が注がれてきたのはいうまでもありません。そして2018年、開校70周年を迎えました。同年9月には、今の清泉女学院を知ってもらうべく、ホームページをリニューアル。それは「既存のものと、新しいもの・進化させるものとを整理することでもあり、4つのプログラムに集約されたのです」と入試広報部長の瀧康秀先生。 今年5月、瀧先生にプログラムについてお話を伺い感じたのは、70年の歴史に奢ることなく、新しい挑戦に向かうカトリック女子校の底力。皆さんも、4つのプログラムを手掛かりに、清泉女学院の6年間をイメージしてみませんか。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ INSPIRE Yourself ライフ オリエンテーション プログラム □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■  学院のモットーは「神の み前に 清く 正しく 愛ふかく」。時代が移っても、変わらないモットーのもとに行われる「こころの教育」は、いわば清泉女学院の“背骨”のようなものです。中1・2という早い段階で行う宿泊研修、中3の広島訪問、高1の山手教会訪問、高2・3は校内プログラム。この6年一貫教育の中に体系化された宗教・倫理教育が、他者への思いやりや自己肯定感を育てる役割を果たしてきました。「ライフ オリエンテーション プログラム」です。  ただ、今は、急速に進化するAIといかに生くべきかという新しい課題が生まれた時代でもあります。倫理でも「AIと生きる未来」の授業があります。この授業を受けた生徒の呼びかけで、およそ5年前に生まれたのが「中高生AI倫理会議」の取り組みです。「ロボットに対する優しい眼差しは大人を驚かせました」(瀧先生)というように、生徒の発想は柔軟です。AI専門家の講演を聞いて生徒が考えまとめたAI倫理憲章を内閣府に提出し、意見をもらうことを重ねてきました。倫理の授業からは、もう一つ、生徒発プロジェクト「Seisen Peace Project」が2年前に発足しました。授業以外でも平和について話したいという生徒の思いが形になったものです。この2つのプロジェクトでは栄光学園の生徒をはじめ他校の生徒とも定期的に会議を開くなど、学校という枠を軽々と越えて課題を一緒に考える人と人のつながりを作っています。お話を伺えば伺うほど、「こころの教育」とは、決してやさしさだけではないことを、生徒の行動が示してくれるのだと思わずにいられません。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ CONNECT The World グローバル プログラム □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■  清泉女学院の母体は、国際的なカトリック修道会。現在、世界25カ国に50校以上の姉妹校があります。創立以来、グローバルな視点を持ち続けてこられた一つの背景です。体験学習を大切にしながら体系化されたプログラムには、今の清泉女学院だからできることを加えるなど、「地球市民」育成の心意気が常に吹き込まれています。  体験型学習で、ニュージーランド短期留学や語学研修以外に、忘れてはならないことを二つ。一つは、栄光学園とともに参加している、ボストンカレッジ(イエズス会が運営)でのリーダー研修「Ever to Excel」です。世界中から集まった同世代200名の中で、日本からの参加は栄光生と清泉生のみ。英語力の審査を経て参加した生徒もハードに感じる充実の内容で、幾つものテーマについて、現地の教授のレクチャーや大学生とのセッションを繰り返す日々は、生徒を大きく成長させてくれるようです。初年度の昨年は3名が参加、今年は10名が参加する予定だそうです。  そしてもう一つが、長年、関係を築いてきたベトナムでのスタディー・ツアー。ベトナムを知ることで様々な課題を考え、行動を起こしていく国際理解プログラムです。日本との違いを見、戦跡から戦争を肌で感じることも大きな経験ですが、「生徒は経済成長するアジアの国の活気に、強い衝撃を受けるようです」(瀧先生)。ボランティア体験から、困っている人に手を差し伸べることを学ぶと同時に、世界の一員として行動することを自然に学んでいく体験と言えるでしょう。帰国後は、模擬国連やボランティアへ積極的に参加するなど生徒自身も自分の変化に気づくようです。  世界の国の人々とのコミュケーションツールとしての英語も、新しい取り組みを取り入れながらブラッシュアップしています。  入試改革や小学生の英語学習環境の変化から、清泉女学院でも、帰国生や英語既習者の入学が増えています。そこで2018年から、中1・2で3つに分ける英語の習熟度別授業を始めました。一般試験合格者対象のSE(Standard class English)、一般入試合格者の中で英検3級以上取得者対象のAE (Advanced class English)、帰国生試験B方式とグローバル入試合格者対象のARE (Advanced Returnees’ English)の3つに分けます。はじめの一歩から始める生徒、週2時間のネイティブ教員との授業で英語をより身近にしていく生徒、週5時間のネイティブ教員の授業で英エッセイライティングやプレゼンテーションなどの発展的活動を行う生徒、それぞれが入学時の習熟度に合わせて英語の力を伸ばしていくことで、コミュニケーション能力を磨いて行きます。中3では、High Advanced classを加えた4レベル分けで、よりきめ細やかな対応となります。  中国語、スペイン語、オンライン英会話を放課後に学べるFLIP(Foreign Language International Program)も、中2〜高2までの希望者に開講。英語以外の言語が生徒を、より広い世界に誘います。 (写真は、職場見学の発表会、内閣府を訪問したAI倫理委員会メンバー、ベトナム・スタディー・ツアーでベトナムの子どもたちと)

オルセースクールミュージアム in 東京女学館

「オルセー美術館公認リマスターアート展 オルセースクールミュージアム in 東京女学館」が、2019年3月24日(日)〜31日(日)、東京女学館中学校・高等学校の校舎を会場に開催されました(スクールミュージアム事務局主催。東京女学館小学校・中学校・高等学校、(株)私学妙案研究所、(株)アルステクネ共催)。 昨年、創立130周年を迎えた東京女学館の、記念事業の一つに位置付けられています。オルセースクールミュージアムは8校目の開催ですが、東京女学館では「19世紀絵画と女性」というテーマが掲げられました。 入場無料で広く一般の方々に学校を解放した、アートと学校とのコラボレーションイベントを見学しました。 *********************** ゴッホの絵が描かれた年、東京女学館が生まれた *********************** 見学したのは初日。桜の樹の下には、開門を待つ列ができていました。受付でリーフレットを受け取り、案内図を見ながら会場へ向かいます。 【ミュージアム構成】 第一会場 「『ローヌ川の星降る夜』が生まれた時代」 絵画21点 第二会場 「19世紀と女性たち」 絵画9点 東京女学館所蔵作品展示 東京女学館130周年関連資料展示 草月流生け花展示 第三会場 絵画1点、児童・生徒作品展示、ミュージアムショップ、生徒発表 講堂 講演会や生徒発表 スクールミュージアムは、フランス国立オルセー美術館(パリ)の印象派の絵画コレクションを中心とした「リマスターアート」の展示が中心。しかし上記のように東京女学館では、学校の歩みも同時に振り返る構成でした。学校が所蔵するミロやマチスのリトグラフが惜しげもなく飾られる廊下を抜けての移動、今回のために企画された英国人教師ドロセア・E・トロット先生の功績をしのぶ展示や歴史資料室、生徒によるダンスやコンサートが披露される講堂や食堂ステージなどを行きつ戻りつしながら、アートと東京女学館を堪能できる仕掛けです。 アートと学校がコラボする「スクールミュージアム」は、これまでに関東・関西7校で開催され、東京女学館は8校目の開催となります。ベーシックな企画としては、生徒が絵画案内人を務める「アートコンシェルジュ」があります。とはいえ、スクールミュージアムに決まった形があるわけではなく、学校ごとに展示のテーマやイベント企画は独自に練られ、各校の特色が反映されてきました。過去開催校の企画に関わってきたスタッフも、学校の個性が出ることに驚くほどです。 東京女学館での開催に当たっても、スクールミュージアム事務局スタッフと学校との話し合いが重ねられました。テーマ設定や当日の企画はもちろん、高校美術選択者が近隣の大使館や日赤、公的機関などに出す招待状のデザインを発案し柔軟に対応するなど、徐々に学校の思いが形になっていったそうです。 そして掲げられた展示テーマは、「『ローヌ川の星降る夜』が生まれた時代」(第一会場)、そして「19世紀と女性たち」(第二会場)。 第一会場のテーマを導いた作品、ゴッホの『ローヌ川の星降る夜』に使われているのは青と黄色の2色。ゴッホが色によって心や思想を表現しようとした、色彩に変革をもたらした絵画と言われています。そして、この絵が描かれた1888年は、東京女学館が「諸外国の人々と対等に交際できる国際性を備えた、知性豊かな気品ある女性の育成」を目指して設立された年。2018年度が130周年イヤーだった同校にとって、この作品、スクールミュージアムとの邂逅は、見えない縁に導かれたように思われてきます。 第二会場では、女性を描いた絵画とともに、「19世紀の社会と女性画家」「なぜ女性画家が少ないのか」を考察したパネルを掲示。東京女学館が女子校として歴史を積み重ねてきたこととリンクします。人としての生き方を考える作業でもあったかもしれません。 この第二会場では、東京藝術大学油画科学生(東京女学館卒業生)による、メアリー・カサットの『庭で縫う女』の公開模写が、初日から3日間、行われていました。 「数ある展示絵画の中からこの作品を選んだのはなぜ?」と聞くと、明快な答えが帰ってきました。 「メアリー・カサットの生き方が好きなので、この絵を選びました」 カサットは、男性優位な社会で、父親の反対にあいながらも、当時まだまだ少なかった女流画家として印象派に存在感を示し、後年は婦人参政権運動を支援したことでも知られています。東京女学館では、起業家、子育て後のキャリアアップ、二度目の大学進学を志す卒業生が珍しくありませんが、描かれた19世紀の女性とその時代、東京女学館の歴史が合わせ鏡のようにシンクロしていました。 第二会場となった部屋には普段は、卒業生である画家、小沢眞弓さんの作品が架けられているそうです。会期中、印象派の絵画とともに2箇所に展示されていました。 ******************** “世界で最も原画に近い、もう一枚の絵画” ******************** さて、「リマスターアート」と言っても、耳慣れない方も多いかもしれません。ここでリマスターアートについて触れておきましょう。 スクールミュージアムで展示されている“作品”が「リマスターアート」です。印刷技術は進歩し、展覧会の図録も美しい出来栄えですが、原画の持つ「力」までを再現するのは難しいものです。リマスターアートは、最新のデジタル技術とコンピューターの画像処理技術を用いて、“世界で最も原画に近い、もう一枚の絵画”を実現。本アート展の監修者、(株)アルステクネ社長の久保田光嚴氏が作り上げたテクノロジーで、再現にあたって学術的な検証(例えば作家が意図したであろう環境光、製作当時の時代背景、宗教的背景など)まで施すのが真骨頂です。リマスターアートを見たとき、絵筆のタッチ、絵の具の凸凹、質感の完成度に驚きます。美術科の教員でもある副校長・渡部さなえ先生は、「高度なものほどリアルに感じます。細かいものほど精巧。リマスターアートの技術の高さに驚きました」と語ります。 そして、通常の絵画鑑賞では決して許されないような、息がかかるほど近づいたり、ルーペで見たり、光を当てて見たりできるのも、リマスターアート展の大きな魅力です。