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世界を見つめる私学の学び-----SDGsを“自分ごと”化して行動する生徒たち

世界を見つめる私学の学び-----SDGsを“自分ごと”化して行動する生徒たち

世界を見つめる私学の学び
-----SDGsを“自分ごと”化して行動する生徒たち

「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2015年の「国連持続可能な開発サミット」において採択された17の目標と169のターゲットで構成される、国際目標です。この大きく重要な課題に今、小学生から大学生まで、また企業も、そして世界各国も、それぞれが取り組んでいます。NettyLand『かわら版』6・7月号では、このSDGsと私学の教育に注目しました。

***SDGsを意識した学び

今年5月、「SDGsの取り組みについて」のアンケートを私立中学に実施し、「SDGsに関連する学習プログラム」の有無と教科など、「学校としての取り組み」を聞きました。
93校より回答を得、プログラムが「ある」と回答した学校は約78%で、学校教育が、SDGsと何らかの形で関わっていることがうかがえます。SDGsに関連する学びは、総合学習、社会、英語、理科、あるいは教科横断など多岐にわたります取り組み方もさまざまです。
個々の学校の実践を掘り下げるのは、またの機会に譲ることとし、今回はアンケート回答を中心にご紹介します。

***SDGsで世界を学ぶプログラム

SDGsを絡めたオリジナルのプログラムを構築している学校は、まだそう多くはありません。
和洋九段女子には、中学1年の総合学習から中高の修学旅行、そして高校の自主活動まで繋がるプログラムがあります。SDGsに取り組む企業や団体の取材など、徐々に学校の外に目を向け、社会に向けたアクションが生まれています。同校の中3生(当時)が作ったオリジナルの「SDGsすごろく」は、『SDGs探究アワード2019』で優秀賞を受賞しました。「大切なのはSDGsを通して生徒たちに何をやってもらいたいか」、それがプログラムを貫く信念です。聖徳学園の高2生は教科横断型学びで「STEAM」と「SDGs」に取り組みます。生徒それぞれがゴールを考えて取り組めるようになることを理想としており、国際支援プロジェクトを立ち上げ、担当した国の問題や課題を発見し、解決方法を検討、実践した結果をまとめて発表します。
模擬国連の活動を発展させて今年から始まった、桐蔭学園の「15歳のグローバルチャレンジ」も、プログラムが進む中でSDGsとの関わりが出てくるようです。
いずれもSDGsの掲げるゴールのうち、どのゴールに取り組むかではなく、協働しながら意見や考えを形にしていく過程に成長の足跡が残ります。

***SDGsは身近な課題

一方、鷗友学園女子のように「特別なプログラムがあるわけではない」とする学校もあります。「生物で生態系の学習をしたら、園芸、地理とコラボレーションして、バイオエタノールの利用について考えるなど各教科、その分野の中で意識する」といいます。足立学園では、「もともと取り組んでいる『いのちの授業』やリサイクルなどは、SDGsに当てはまるという認識」としています。成立学園の「ナショジオ学習」も中学開校以来のプログラム。自由学園(2024年共学化予定)は、9月の国際平和デーに合わせて学校でも平和週間をもうけ、平和を考えています。立教女学院や大妻中野などのユネスコスクールは、特定の授業や活動に限らずSDGsと「親和性のある取り組み」があります。日々の学習や活動はSDGsと有機的に関連し、「世界」と切り離して考えることはできません。
生徒自身の問題意識が課外活動に発展したのは文化学園大学杉並の「STEAMプロジェクト」。生徒会活動のなかでは、函嶺白百合学園の「NPO法人Blue Earth Project」への参加、武蔵野東の、生徒会活動のひとつ、「探究プロジェクト」といった例があります。

***動き出す生徒たち

教科での学びの他、生徒が自主的に社会とつながりながら、課題解決に取り組む事例もあります。
福岡雙葉では、フードロスを考えたお弁当システムを生徒と企業とが連携して構築し、実践しています。静岡聖光学院は、地元企業とクックパッドとともに生徒主体で商品の企画開発から販売活動まで行う企画「F×edプロジェクト」をスタート。麗澤には今年、SDGs研究会が発足しました。フェアトレードで仕入れたコーヒー豆を、オンラインストアを開設し販売。さらに、その収益で小児がん支援のレモネードスタンド活動を行うというように、課題解決の行動とビジネスモデルとしての活動に発展させています。

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獨協の坂東広明教頭先生は、「SDGsと謳っているものが溢れている今、生徒たちには、『それがほんとうに持続可能な社会の実現につながり得ているのか?』と常に主体的、批判的に判断できる力を育んでいくことが、これからはより重要な課題になってきているように感じています」と語ります。2030年(ゴール達成目標年)に社会を担う世代の幸せな未来のために、SDGsを通して何をどのように学んでいるか、ぜひ各校の取り組みにご注目ください。
(以上、NettyLand『かわら版』6・7月号より)


「NettyLand 「SDGsアンケート」結果報告 1〜3」もご覧ください。