千葉県・柏エリアの私立中高一貫校座談会
中高一貫で世界に羽ばたく「グローバル教育」
千葉県・柏エリアの私立中高一貫4校の校長先生による、「グローバル教育」をテーマにした座談会が開催されました。各校の教育理念や特色あるプログラムやグローバル人材育成について、活発な意見が交換された様子をお届けします。

左から芝浦工業大学柏中学高等学校 中根正義校長、麗澤中学・高等学校 櫻井讓校長、流通経済大学付属柏中学校・高等学校 堀江健二校長、二松学舎大学附属柏中学校・高等学校 七五三和男校長。各校の取り組みについて和やかに語り合った

芝浦工業大学柏中学高等学校
中根正義 校長
探究×グローバル×理数の
掛け算で世界へ
編集部 本日はグローバル人材育成をテーマに、各校の取り組みについて伺っていきます。まずは各校の理念と具体的な取り組みを、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の芝浦工業大学柏中学校から教えてください。
芝浦工業大柏(中根校長) 本校では「創造性の開発と個性の発揮」という建学の精神のもと、「探究・グローバル・理数」の3本柱を教育の基盤としています。
グローバル教育で大切なのは「英語を学ぶ」のではなく「英語〈で〉学ぶ」ということです。世界の人々とコミュニケーションを図るツールとして英語を用い、探究学習やSSHならではの理数教育によって育む知的好奇心や主体的に学ぶ力を国内外で生かしたいと考えています。
そのために、英語の授業では生徒が英語を聞いたり使ったりする機会が多くあるイングリッシュリッチな授業を行っています。外部検定では国際通用性のあるケンブリッジ英検を導入しており、そうした取り組みにより海外の生徒と英語で議論や発表をする、真の意味でのグローバル教育を目指しています。

ベトナムFPT高校との共同探究プログラム
編集部 具体的にはどのようなプログラムを展開しているのでしょうか。
芝浦工業大柏 中3全員参加のニュージーランド研修(10泊12日)では、ホームステイをしながら、さまざまな環境の現地校10校に通学し、現地の生活に溶け込みながら、語学習得にとどまらない異文化を体験します。このほかにも希望者向けの夏期ホームステイ研修(イギリス・アメリカ・カナダ・オーストラリア)があります。各国の大学に在学している卒業生と直接交流をするプログラムもあります。
ユニークな取り組みとしては、ベトナムの連携高校との共同探究プログラムがあります。水質浄化など科学系テーマを共同研究し、1年交代で互いの国を訪問して英語で発表をします。タイの大学が主催する探究発表会にも参加しています。さらに「グローバル探究ツアー」として、昨年まではアイスランドを訪問。現地の高校生や大学生と交流しながら、地熱発電やダイバーシティをテーマにした探究学習を行いました。今年度はスウェーデンを訪れます。
このようなさまざまな取り組みを積み重ねた結果、昨年度は海外大学に17大学・6名が合格しました。そのなかには、世界トップクラス大学に合格し、国費留学生に選ばれた生徒もいます。

グローバル探究ツアーではアイスランドを訪問
麗澤(櫻井校長) ベトナムとの共同探究がSSHの活動と深く結びついているのですね。毎年継続して互いに行き来することで、一過性ではない本物の関係性が育まれるのだと思います。
流通経済大柏(堀江校長) 海外大学合格者が年々増えているという実績に驚かされました。英語をツールとして使う場面が豊富にあることで、自然と力がついてくるのでしょうね。
二松学舎大柏(七五三校長) 「グローバルと探究を掛け合わせる」というのは、本校の「NISHO GLOBAL PROJECT」に通じるものがあります。6年間で計画的に体験を積み上げる仕組みが、着実に実力が身についているのを感じます。

麗澤中学・高等学校
櫻井讓 校長
日本を知り世界とつながる
グローバル教育
編集部 麗澤中学校では、創立当初から「知徳一体」の教育理念のもと、心の教育を大切にされていますが、グローバル教育においてはいかがでしょう。
麗澤 麗澤の教育は、「道徳科学(モラロジー)」という建学の精神にもとづいています。その出発点は「心の力を鍛えること」。グローバル人材というと、英語力や国際経験ばかりが注目されますが、私たちが最も大切にしているのは、異文化に飛び込んだときに自分らしくいられる、人間としての芯の強さです。
そこで「麗澤教育が伸ばす5つのL」として、Language(英語力)、Logical Thinking(論理的思考力)、Liberal Arts(教養)、Literacy(情報活用力)、Leadership(リーダーシップ)を軸に据えた教育を実践しています。本校はイギリスのパブリックスクールがモデルですので、「英語はできて当たり前」という校風が受け継がれています。
編集部 特徴的な教育プログラムとしては、どのようなものがあるのでしょうか。
麗澤 本校のグローバル教育を象徴する中3全員参加のイギリス研修(約2週間)は、これに惹かれて入学する生徒もいるほどの人気です。
これは単なる語学研修ではなく、例えば、昨年度はイギリスの現地校で、日本の古典の『竹取物語』を英語で演じて披露。異なる文化をもつ相手に日本の古典を英語で伝えるという、ハードルの高い挑戦は生徒たちに大きな自信をもたらしました。
ほかにもタイでのボランティア活動や、モンゴル・インド・シンガポール・台湾・韓国など約10か国に生徒を派遣するなど、多彩な海外研修プログラムがあります。
また、台湾から約100名を筆頭に、ブラジルから約30名など、世界各国から留学生を受け入れており、学内が非常に多様性に富んでいます。
授業では、中1から言語技術教育(Language Arts)を学び、思考を言語化する力を丁寧に育成。言語技術の土台があることで、英語の表現力も大きく伸ばせます。グローバルな視野を広げるという意味では、中3及び高1・2を対象に、毎年約30名の卒業生を招いた「職業別講演会」もあります。海外で活躍する卒業生のリアルな声を直接聞くことで、将来のロールモデルをイメージできるようになります。

イギリスで『竹取物語』の英語劇を披露
芝浦工業大柏 イギリスで『竹取物語』の演劇を披露するというのは、ユニークでとても興味深いです。日本文化を英語で発信する体験は、「英語で何かを成し遂げた」という自信になりますね。
流通経済大柏 海外で活躍する卒業生がロールモデルとして、具体的な体験談を伝える「職業別講演会」は、ぜひ参考にしたいです。本校でも卒業生との繋がりを大切にすることで、ロールモデルになってもらおうと思います。
二松学舎大柏 言語技術教育を中1から正規授業として取り入れているのは、英語力の前段階として大変重要な取り組みです。思考を言語化する力があってこそ、英語でも自分の考えを伝えられる。その順序を重視する姿勢は、本校の論語教育にも通じています。

流通経済大学付属柏中学校・高等学校
堀江健二 校長
6年間の一貫教育で育む
「挑戦する力」
編集部 流通経済大学付属柏中学校は、2023年に中学校を開校し、今年度、一期生が高校へ進学。中学校の完成年度を迎えましたが、グローバル教育では何を重視していますか。
流通経済大柏 本校は「未来創造教育」を教育の柱に据え、生徒が自分の可能性に挑み続けられる環境をつくっています。グローバル教育においても「英語〈で〉学ぶ」と発想を転換し、英語というコミュニケーションツールを使って何を伝え、何を成し遂げるかを問います。
そのためにも失敗を恐れず、まず動いてみる。そんなアントレプレナーシップ(起業家精神)を6年間で培い、これからのグローバル社会を生きる力を身につけてほしいですね。
編集部 どのようなプログラムで、それらの力を育成していくのでしょう。

中1では、外国人留学生を英語で浅草案内に挑戦
流通経済大柏 中学では「日常の中にグローバルを持ち込む」ことが柱です。中1の校外学習では、招いた留学生を英語で浅草案内するプログラムを実施。自分たちで英語の観光案内パンフレットを作成し、外国人留学生と英語で会話することで、「伝えたい」という強い動機を生み出しています。
中2では東京グローバルゲートウェイを訪れ、ネイティブのエージェントとマーケティングや演劇などさまざまなテーマに挑戦し、実践力を習得します。中3は昨年度初めて、シンガポール・マレーシアへの修学旅行を行いました。シンガポールでは大学の授業に参加したり、大学生と一緒に街歩きをしました。マレーシアの村では民族衣装を着たり、現地の食事を一緒に食べてゲームをしたりするなどで交流を図りました。
「文法が完璧でなくても通じる」という実体験が、英語学習へのモチベーションを上げてくれています。
高校では、カナダ・バンクーバーとオーストラリア・ケアンズでのホームステイ研修(希望者)を実施。このほかにも、中高生対象の第2外国語講座(フランス語・中国語)を土曜日の選択授業として行っています。専任教員が授業を担当し、2年間で一つの言語のカリキュラムを完成させる内容です。
今後は、本校の母体企業であるNX(日本通運)グループとの連携を深めて、グローバル教育を充実させていきたいですね。NXグループは世界27カ国に拠点がありますから、その企業ネットワークのメリットをうまく生かしていこうと考えています。
芝浦工業大柏 中学開校から4年目にもかかわらず、ここまで段階的なプログラムを整えているのはすばらしいですね。NXグループの海外拠点との連携が実現すれば、独自の取り組みができそうです。
麗澤 シンガポール・マレーシア修学旅行では、現地の学生との交流や文化体験が生きた教育になっていますね。現地の日系企業を訪問して取材するようなプログラムを組み込むと、海外で働く姿が想像しやすくなると思います。
二松学舎大柏 流経大柏校は、全校生徒が一つになってスポーツを応援する「母校愛」が印象的です。スポーツで世界を目指す生徒が出てくると、ほかの生徒たちにもプラスの影響がありそうですね。

二松学舎大学附属柏中学校・高等学校
七五三(しめ)和男 校長
論語を軸にした教育で
「チェンジメーカー」を育成
編集部 創立149年の歴史を持つ二松学舎ですが、附属柏中学校では、論語教育とグローバル教育をどのように考えているのでしょうか。
二松学舎大柏 本校は「東洋の精神による人格の陶冶」「己を修め人を治め一世に有用なる人物を養成す」を建学の精神とし、渋沢栄一の「道徳と経済の両立」という哲学も根幹となっています。中高6年間で学ぶ「論語」から人間力を培い、それを土台として世界に目を向ける。これが本校のグローバル教育です。
自分の軸を持つことで、はじめて異文化と本当の意味で向き合えます。また、「Be a Changemaker」というキーワードを掲げ、世界を変えていく変革者を育てることを目指しています。
編集部 具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。
二松学舎大柏 中学は基礎作り、高校は実践・発信をしながら、6年間で「自分の言葉で世界に語りかける力」を育てます。具体的には、中学では中1全員が葉山のイングリッシュキャンプに参加。校外教室「手賀沼・田んぼの教室」(中1)では、地域へのインタビューや観察、発表、英語での簡単な発信を行い、地元のローカルから世界に視野を向けています。
中学のグローバル探究コースでは「NISHO GLOBAL PROJECT」といって企業課題に取り組む「コーポレートアクセスプログラム」、社会課題を探究する「ソーシャルチェンジプログラム」、ネイティブ教員が指導する「英語力強化プログラム」、そして中1では「コミュニケーションワークショップ」もあります。
高校の「グローバル探究」は希望者が放課後を活用して行うカリキュラムで、「英字新聞プロジェクト」「英語プレゼンプロジェクト」「自由探究プログラム」などがあります。

カナダの名門・ブリティッシュコロンビア大学での学びもあるカナダ研修
また、本校の海外研修を象徴するのが高校生の希望者を対象としたイギリス研修です。イギリスの名門ラグビースクールの寮に宿泊し、世界の生徒と交流。ロンドンなどへの小旅行ではイギリスの文化や歴史に親しみます。
帰国後は、柏の葉ラグビースクールジャパンを訪問し、英語で研修の振り返りをプレゼンをしたりして、スポーツ交流を行います。逆にラグビースクールジャパンの生徒を招き日本文化を体験してもらうなど、お互いが行き来しながら共に学ぶ仕組みを作っているところです。
中2~高3の希望者が対象のカナダ・バンクーバー研修では、中学生はブリティッシュ・コロンビア大学のキャンパスにある寮に滞在し、高校生はホームステイをして過ごします。ほかにオーストラリア・ブリスベン研修(中2~高3・希望者)もあります。
芝浦工業大柏 ラグビースクールジャパンとの連携が奥深いのが印象的です。海外研修の振り返りや文化体験と組み合わせることで、お互いの関係性を深め長続きさせてくれる気がします。
麗澤 論語という軸があるからこそ、異文化と向き合う姿勢が育まれているのがよくわかります。教育理念をいかに具体的な実践に落とし込むかは、麗澤でも日頃から考えていることなので、大変参考になりました。
流通経済大柏 地元を知ることから世界へ発信する。そういう段階的な設計ができるのは、中高一貫教育の強みです。「チェンジメーカー」というキーワードで、さまざまなプログラムがしっかりつながっていると感じました。
海外で活躍できる人材を
育てる教育を
編集部 最後に、グローバル教育を通じてどんな生徒を育てたいのか、メッセージを聞かせてください。
芝浦工業大柏 これからの中等教育機関に求められるのは、知的好奇心を育み、生涯にわたり主体的に学び続けることができる人材の育成です。知的好奇心を醸成するための探究学習と、世界の共通語である英語をコミュニケーションツールとして使いこなせるようになることで、将来、国内外で活躍できる人材をしっかりと育てていきたいと考えています。
麗澤 麗澤の教育の根幹にあるのは「人や社会のために自分の力をどう活かすか」を考える生徒を育てるということ。それには、異なる文化や価値観と出会ったとき、それを受け入れ、相手を尊重できる心の力が必要で、語学力はその先についてくるものです。麗澤で過ごした6年間は、生涯生きる土台になっていきます。
流通経済大柏 失敗してもいい、とにかく挑戦する。そんな「まず動いてみる人間」を育てていきたいと考えています。6年間の一つひとつの体験の積み重ねが、「自分はやれる」という自信になります。その自信がこれからの社会を生き抜く力になっていくはずです。
二松学舎大柏 語学力だけでなく、多文化を尊重しながら世界で行動できる人材を育て送り出すこと。それが本校の変わらぬ使命です。論語を軸にそういった人間教育を実践していきたいと考えています。
編集部 各校のグローバル教育の様子がよくわかりました。
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
芝浦工業大学柏中学高等学校
「創造性の開発と個性の発揮」を建学の精神に、チャレンジ精神と個性を生かした自由な校風が特徴。知識集約型の教育から課題解決型の探究教育に転換し、文系・理系の枠組みに捉われない課題探究活動を実践。探究・グローバル・サイエンスの各プログラムに注力すると共に、独自の留学・海外進学プログラムも実施している。

中3全員が参加するニュージーランド研修では、ホームステイや現地校生徒と英語で交流

課題研究の成果を海外の発表会でプレゼン。今年はタイの発表会で生物分野・物理分野ダブルで銀メダルを受賞
https://www.ka.shibaura-it.ac.jp
〒277-0033 千葉県柏市増尾700 TEL:04-7174-3100
アクセス 東武アーバンパークライン(野田線)「柏駅」「新柏駅」よりスクールバス
二松学舎大学附属柏中学校・高等学校
「グローバル探究コース」と「総合探究コース」の2コース制をとり、「人間力の向上」「学力の向上」を2本柱に日本文化とグローバル教育に力を入れている。「自問自答」をキーワードに、「論語」教育や体験型校外学習などを通じて主体性と協同性を獲得。中3では3年間の集大成として、8000字の卒業論文と7分間のプレゼンテーションにチャレンジする。

多彩な年間行事で充実した学校生活を。中1では田んぼの教室(田植え)も

人間力と学力の向上を教育の2本柱に掲げ、私学ならではの特色ある教育を
https://nishogakusha-kashiwa.ed.jp/
〒277-0902 千葉県柏市大井2590 TEL:04-7191-3179
アクセス 「柏」「新柏」「我孫子」各駅、北総線・新鎌ヶ谷各ルートからスクールバス(無料)
流通経済大学付属柏中学校・高等学校
1985年創立の流通経済大学付属高等学校に繋がる中高一貫校として、2023年4月開校。将来を見据えた「未来創造教育」を実践する。激変している社会情勢の中でも逞しく「国際社会に貢献できる有為な人材」の育成のため、何色にも染まっていない学校だからこそできるワクワク感を持って、慣例に捉われないグローバル教育にチャレンジしている。

体験・対話を重視した授業を通して、確かな学力の定着と非認知能力の向上を目指す

https://www.ryukei.ed.jp
〒277-0872 千葉県柏市十余二1-20 TEL:04-7131-5611
アクセス 東武アーバンパークライン「江戸川台駅」、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス駅」よりスクールバス約10分
麗澤中学・高等学校

「自分(ゆめ)プロジェクト」の集大成、中学3年生のイギリス研修の様子

創立者である法学博士・廣池千九郎が提唱した「道徳科学(モラロジー)」に基づく知徳一体を教育理念とし、「感謝の心」「思いやりの心」「自立の心」を育む。論理的思考力や発信力を磨く言語技術教育と4技能を鍛える実践的な英語教育を軸に、地球規模の視点で物事を考え、能力を発揮できる「本物の叡智」を兼ね備えたグローバル人材を育成している。
https://www.hs.reitaku.jp
〒277-8686 千葉県柏市光ヶ丘2-1-1 TEL:04-7173-3700
アクセス JR常磐線各駅停車(東京メトロ千代田線直通)「南柏駅」下車、東武バス東口1番乗り場より約5分「麗澤幼稚園・麗澤中高前」下車。
