私学探検隊

IB教育のもと、中学3年間で「人としての器」を広げ、そこに、高校3年間で「タフな学力」を満たしていく

2017年に、埼玉県初のIB(※)中等教育プログラムMYP認定校となった同校は、現在、高校のプログラムであるDP候補校であり、今春には高校に「IBコース」が誕生しました。次代を見据えて世界標準の教育を展開する同校での学びは、各所でさまざまな成果を芽吹かせています。今回は中学の学びを中心に、校長の城川雅士先生と、副教頭で国際教育部長の前田紘平先生にお話を伺いました。

高校で「IBコース」が始動。コース1期生は21名

IBの授業「地球サミット」で、エネルギー問題をディスカッション

IBの授業「地球サミット」で、エネルギー問題をディスカッション

中高一貫クラスの高1生が前田先生に言ったそうです。「勉強会をしたいが、どう運営すればいいだろうか」と。「その後、みんなに声をかけ、放課後に『死刑』と『無期懲役』の境目は何なのかとディスカッションをしていました。それを見て、中学3年間のIBの授業で知的好奇心に火がついたなと。IBでは生涯学び続ける姿勢をいかに身につけるかが重要ですが、期待した以上にその姿勢が育っていることを実感しています」
そして今春、高校には「IBコース」が誕生。ネイティブと日本人の二人担任制で、高2から本格的に始まるDPに備えて英語力や思考力強化を図るこのコースは、当初の予定より多い21名での出発となりました(一貫生5名・高校入学生16名)。今年のIBコースの説明会参加者は、かなりの人数だとか。注目です。
同校では中学から全教科をIBで学びますが、ここでは「人としての器を広げる」中学3年間の学びの様子を抜粋してお伝えしましょう。

※IB…国際バカロレア機構が提供する教育プログラム。現在、世界140カ国以上、約5000校が実践。対象年代によりPYP・MYP・DPに分かれ、「論理的思考力」「問題解決力」、そして「社会貢献への精神」などを育成するとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア)を与えるもの。多様性を共有することを目指して「生涯学び続ける姿勢」を育むプログラムであることも大きなポイント。

PEP(パワー・イングリッシュ・プロジェクト)
目標は「全生徒が英語を得意教科に」

大学入試突破のため、ひいては生徒たちが生きる次代を見据えて「全校生徒が英語を得意教科に」をスローガンに掲げる同校。7月上旬、中1では林間学校が実施されましたが、早くも多くの指示は英語で行われました。「中1の11月には、ブリティッシュヒルズ語学研修も行いますが、出発前のバスの中から伝達事項はすべて英語です。『命に関わらない限り、日本語は使わないこと』と、かなり意識的に取り組んでいますね。帰ってきた生徒に『お帰りなさい』と声をかけたら、スイッチが切り替わらず、一生懸命英語で答えていました(笑)」と城川校長。
6月に上野で行われた中1の校外学習では、「変化」をテーマに英語・美術・理科の視点から動物園、美術館、博物館で学びました。「学んだことをもとに英語の授業では『絶滅危惧種の現状と解決策』について発表しました」(前田先生)。
また、中2は鎌倉に行って外国人観光客に街頭インタビュー。中3では、集大成として修学旅行でニュージーランドへ行き、異文化を実体験します。
同校にはネイティブの先生6名が常駐するインターナショナル・アリーナ(通称「日本語禁止部屋」)があるほか、各種コンテストや多種多彩な語学研修など、英語学習へのモチベーションアップを図る行事も数多く用意されています。高校に入るとオーストラリアの姉妹校との短期交換留学制度も。この夏には5名(うち一貫生は3名)が渡豪しました。
そのような環境の賜物でしょう、昨年度の英検準2級以上の取得率(中3修了時)は75%でした。

PBL(プロジェクト学習)世界の課題に主体的に取り組む

「プロジェクト学習」とは、世界をテーマにした同校独自のグローバル教育。中1では「世界は違う」、中2では「世界に貢献」、中3では「世界と働く」をテーマに学びを進めます。
中1ではJICAや各国大使館を訪ね、中2では服を集めて途上国の難民に送るなど、学期に1~2回行われる体験型学習「SW(右ページ下図参照)」と併せて、段階を踏んで世界中のさまざまな問題に気づき、正解のない課題に取り組んでいきます。
ところで、先日、上智大学外国語学部に進学した卒業生から連絡があったそうです。「中1の時、スウェーデン大使館に行って調べ学習をしたが、この夏、スウェーデン大使館でインターンシップをやることになった。中学での経験が今に活きている」と、先生に感謝を伝えたのだとか。
「このように、中学段階での実体験は具体的な将来像を描くきっかけとなり、学習へのモチベーションにもつながりますね」と城川校長は言いますが、これこそが同校が展開する教育の魅力・成果かもしれません。
「多くのスキルと自分で学ぶ力を身につけられた。IBの学習者像にあるように『挑戦する人』になれたと思う」「授業ではディカッションが多いので、他の人のことやその立場を考えるようになった」とは、IBで学んだ中学3年間を振り返った、現高1の言葉です。
「手をかけ、鍛えて、送り出す」を合言葉とする豊かな教育体制のなか、中学の「人としての器を広げる3年間」と高校の「タフな学力を獲得する3年間」を経た生徒たちは、「社会貢献への志」と「チャレンジ精神」を携えて同校を飛び立っていくのです。

2019年春・大学合格実績(抜粋)
「旧帝大一工」に過去最多の12名合格!、医歯薬にも19名が現役合格!!
 大学合格実績が伸び続けていることはもちろんのこと、中学入学時の偏差値よりも大学合格実績の高さが注目されている同校。今春も国公立67名(過去最多)、早慶上理71名、GMARCH147名(過去最多)と大変好調でした。中高一貫4期生55名のみでいえば、国公立、早慶上理、GMARCHに37名が合格。
「合格できそうな大学」ではなく、「本当に学びたい大学」に送り出すため、生徒の意欲と自信を高める教育を展開する同校で、生徒たちはそれぞれ未来への扉を開いていきます。

おもな合格大学(2019年度/抜粋)

東北大6/北海道大2/東工大3/福島県立医科大1/お茶の水大2/筑波大5/千葉大3/横浜国大3/東京学芸大3/早稲田大21/慶應大10/上智大7/東京理科大33/学習院大15/明治大21/青山学院大14/立教大22/中央大42/法政大33

IB
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PBL
中学3年間のIB教育の集大成となる
「コミュニティープロジェクト」で、社会貢献の戸口に立つ

中3では、中学のIB教育の集大成として「コミュニティープロジェクト」が実施されます。これは、自分の興味・関心に合わせて、自ら奉仕活動を考え、実行するもの。

1学期に企業などを訪問したうえで企画立案→夏休みに奉仕活動→卒業発表・論文作成

という流れで、生徒自身が主体的に取り組みます。
「生徒自身、勉強だけでは得られない貴重な体験だったと実感するようですね」と前田先生。では、現高1の生徒たちの中3時の「卒業論文」から抜粋して、その様子をご紹介しましょう。

■環境問題に関心のある生徒
・訪問先=環境を守る活動をするNPO法人
・活動内容=「植樹」に参加するとともに、そのNPO法人が主催するボランティア活動に会員登録
 さらにその後、友人と一緒に同級生に声をかけ、近隣の公園で行われるフリーマーケットに出店。通りがかった人が目を引くように展示も工夫し、値段交渉にも応じました。約4時間の出店で、予想以上の6,150円を売り上げ、WWFジャパン(世界約100カ国で活動する環境保全団体)に寄付しました。
「企業に電話をしてアポをとり、訪問し、奉仕活動をする。何もかも初めてで、失敗が続いて心が折れそうになった。自分で解決するのは大変だったが、乗り越えた時の達成感は大きく、自信が湧いてきた。なかでも、人と人の関わりの重要性を深く実感し、将来は人と人の関わりを大切にする職業について、多くの人に必要とされる人になりたい」

■医療・薬品関係を志望する生徒
・訪問先=複数の医薬品会社や関連機関
・活動内容=「がん研究会」が行う「古本募金」を知り、友達と3人で募金活動を実践
 始めに、医療関係の仕事に就くためには「先入観を捨て、柔軟性を持ち、創造的な考えを育むこと」が大事だと教わったそうです。そこでチラシを作り、学校内だけでなく見ず知らずの家を訪ね、趣旨を説明して協力を仰ぎました。断られる度に「もっと上手に説明しなければ」とくじけそうになりながらも、目標の300冊を大きく上回り、1000冊を集めました。そのうちの712冊が売れ、13,213円を寄付することができたそうです。
「企業訪問や奉仕活動を通して、人に伝える難しさや思い通りにいかないことを体験し、相手に迷惑なく、簡潔に伝わるようにすることはとても重要だと感じた。この体験を生かし、今後もさまざまなことを体験し、将来に向けて取り組んでいきたい」

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

昌平中学校
[学校HP]http://www.shohei.sugito.saitama.jp/jrhighschool/
〒345-0044 埼玉県北葛飾郡杉戸町下野851 Tel.0480-34-3381
最寄駅/
東武日光線「杉戸高野台駅」徒歩15分。JR宇都宮線など・東武伊勢崎線「久喜駅」からバス5分「吉羽大橋」徒歩8分。スクールバス:「杉戸高野台駅」「久喜駅」からあり。

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