先輩から学び、後輩へとつなぐ本郷だからこそ可能な“縦の学び”の力
中学2年生が1年生を教える
20年以上続く数学合同授業
「勉強も、部活動のように先輩後輩で刺激し合えるものにしたい」。そんな思いから、本郷中学校では20年以上にわたり、中学2年生が中学1年生に数学を教える「数学合同授業」を展開しています。
この授業は単なる“教え合い”ではありません。1学期最初の授業では「中間考査とは何か」をテーマに、2年生が問題の解き方だけでなく、「どのように勉強したか」「どこで苦労したか」「どんな失敗をしたか」まで、自身の経験を交えながら後輩へ伝えていきます。授業前には、2年生が「どんなアドバイスをしたいか」を整理し、1年生側も「先輩に聞きたいこと」をまとめるなど、双方が準備を重ねたうえで授業に臨みます。授業の進め方にも生徒それぞれの個性が表れ、数学の解説を分かりやすくまとめた資料を作る生徒もいれば、定期考査前の心構えや、部活と勉強の両立についてなど生活面を重点的に話す生徒もいるそうです。
「教える側も、きちんと理解していないと人に説明できません。ですから2年生にとっても自然と復習になるんです」と話すのは、入試広報部長の野村竜太先生です。生徒たちは前年度、自分自身が先輩から教わった経験を活かしながら、「もっと分かりやすく伝えるにはどうすればいいか」など自分で考えて授業をつくり上げていきます。
1年間のペア活動が育む
協働力と学び合う姿勢
合同授業では同じ出席番号同士がペアとなり、その関係は1年間継続します。もちろん、最初から気の合う相手ばかりではありません。しかし同校では、その経験自体にも意味があると考えています。「社会に出れば、相性のよい人だけでチームを組めるわけではありません。苦手だから距離を置くのではなく、違う相手とも協働しながら何かを成し遂げる経験は、生徒の成長につながるはずです」(野村先生)。そのため授業後には、「もしアドバイスが物足りなかったと感じたなら、1年後、自分が後輩に教える時にどうすればいいか考えてみよう」と、1年生が別の視点からも学べるようアドバイスを行っています。
この“学年を超えた学び合い”を支えているのが、同校独自の「本郷数学検定(本数検)」です。長期休暇明けに行われるこの検定は、得点に応じて級や段が認定され、取得報は校内に掲示されます。特に中学1・2年生は、数学合同授業のペア同士の平均点が反映されるため、「自分だけ頑張ればいい」のではなく、「ペアで一緒に成長しよう」という意識が自然と生まれていきます。
先輩の姿がロールモデル
生徒同士の教え合いも日常的に
こうした取り組みの背景には、先輩後輩の強いつながりがあります。同校では多くの生徒が部活動に所属しており、運動部・文化部を問わず、中高6年間を通して縦の関係性が築かれています。部活動は、顧問から教わるだけでなく、先輩が後輩を支え、後輩が先輩の背中を見ながら成長していきます。その文化を学習面にも広げたい――。そうした考えが、合同授業や本数検へと発展していきました。
実際、本数検の結果が掲示されると、「何段を取っているのかな」と先輩の結果を確認しに来る生徒も少なくないそうです。さらに、本数検の結果と卒業後の進路を照らし合わせ、「先輩のように頑張ろう」と自己研鑽のきっかけにしている生徒もいるそうです。「学校として『何段を取れば志望校に近づく』という指導はしていませんが、生徒たちは先輩の姿を見ながら、自分なりに価値を見いだしているようです」と野村先生は語ります。こうした空気が根付いているからこそ、同校では“教え合うこと”が特別なことではなく、日常の文化として定着しています。「生徒には、『クラスで何番』『学年で何番』という数字だけに価値を見いださないよう伝えています。同級生同士で競い合うだけではなく、教え合った方がみんな強くなります。部活動と同じで、“チーム全体を強くする”感覚です」(野村先生)。その結果、生徒から先生への質問も、「問題が分からないから教えてください」ではなく、「友達と答えが違ったのですが、どちらがより適切ですか」といった、より深い内容へ変化しているといいます。
高3と中1の合同授業も
さらに広がる“縦の学び”
近年では、この縦のつながりはさらに広がりを見せています。昨年は試験的な取り組みとして、高校3年生が中学1年生に東京大学の数学の入試問題を解説する合同授業が実施されました。当初は、大学受験を控えた3年生がどこまで積極的に関わってくれるか不安もあったそうですが、「東大の問題も中学数学で解ける」という視点から、1年生に丁寧に解説していました。それを受け今年は、「本郷での6年間の過ごし方」をテーマに、高校3年生が入学したての中学1年生にアドバイスする合同授業も開催。
一方で、中学1年生も“教わるだけ”では終わりません。同校では学校説明会に向けて、1年生が受験生へメッセージを書く機会を設けています。「『学校では一番下の学年だけど、中学受験では君たちが先輩なんだよ』と伝えると、『本郷楽しいよ』といった表面的な言葉ではなく、実感のこもった言葉を書いてくれるんです。『夏期講習は大変だったけれど、乗り越えたことで力になった』『過去問は早めに始めた方がいい』など、自分の経験をもとに後輩へ伝えようとしてくれます」(野村先生)。
中1・高3合同授業の様子


高校3年生を前に最初は緊張していた中学1年生ですが、気さくに話をしてくれる先輩たちの姿により、だんだんと笑顔が見られるように。中学1年生にとって、本郷生としての自覚を持つきっかけになったと同時に、先輩との距離の近さを知るよい機会になったようです。
憧れでありライバルでもある
先輩の存在が成長を促す
同校で興味深いのは先輩から後輩への継承に留まらず、「先輩を超えたい」という意識が根付いていることです。先輩のやり方をそのまま受け継ぐのではなく、「もっと良くできないか」「自分たちらしい形に変えられないか」と後輩は常に考えているそうです。異学年との距離が近いからこそ、先輩が“憧れ”であり、“ライバル”でもある――。これは同校ならではの文化といえます。もちろん、先輩も高い自覚を持って後輩と接しています。生活面で後輩が迷惑をかけるような行動をした際には、先生より先に先輩が声をかける場面もあるのだとか。「勉強もそうですが、生活面も教員に注意されるより先輩に言われた方が素直に受け止められますよね」と野村先生。
同校の縦のつながりは、「管理」ではなく、「継承」によって成り立っています。先輩を見て育ち、その先輩を超えようと努力する。学びも、学校生活も、部活動のように先輩後輩で高め合う。その絆から広がる今後の展開に期待が高まります。

去る5月12日に中学1年生・2年生の第1回数学合同授業が行われました。今回は昨年度の中学1年生のテストを用いて、2年生が1年生に解き方を説明。加えて自習の進め方やテスト前の勉強時間など、具体的な心構えや自身の失敗からのアドバイスを伝える2年生の姿も見られました。担当の先生は見守り役に徹しつつ、停滞気味のテーブルには2年生のサポート役を加えるなどさりげなく支援。そのおかげもあり、両学年とも和やかに、時に真剣に交流を楽しんでいました。
中学1年生
●先輩が丁寧に教えてくれたおかげで、勉強をどう進めていったらいいかなどの不安が解消され、中間考査に向けて少し自信がつきました。
●中間考査で、数学に関わらずどのような問題が出るのかまったくわからず不安でしたが、先輩のおかげである程度知ることができ、勉強の進め方を具体的にイメージできました。また、小学生の頃からの悩みである計算ミスの多さも、対策方法を教えてもらえたのでよかったです。
●先輩方から話を聞いて、まず自分の中間考査に対しての不安な部分などを共有することができました。先輩も真摯に回答してくれ、自分のすべきことや、中間試験を受けるまでの大事なポイントがよりはっきりしました。教わったことを意識しながら中間考査に臨みたいです。
中学2年生
●自分が中1の時にしなかった質問をしてくれ、レベルの高さに驚きました。後輩に追い越されないよう、これからもしっかり勉強を続けなくてはいけないと気が引き締まりました。
●自分が解ける問題でも、1年生にわかりやすく教えるとなると、とても難しいなと思いました。2年になって初めての後輩との関わりだったので、とても緊張しましたが後半はリラックスして話すことができました。次回の合同授業も頑張りたいです。
●質問された問題をすぐ説明できたことで、自分の成長を実感しました。同時に人に教えることの難しさを知れたことも新たな発見でした。

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
本郷中学校
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