共学一期生が卒業し、次のステージへ 入学時から将来を見据え、主体的に学ぶ

校長の玉田裕之先生
自分を主語にした
アクティブな進路選択
桐蔭学園中等教育学校は2019年度より従来の中等教育学校(男子校)、中学校(男女別学)を一本化して共学の中等教育学校(完全6年一貫校)に生まれ変わり、今年3月にその一期生が卒業しました。「本校では生徒の発達段階に合わせた『6年間のロードマップ』に基づいて必要な学びを身につけていきますが、共学一期生はそれを完成させて羽ばたいてくれました」と話すのは校長の玉田裕之先生。同校では「アクティブ・ラーニング(AL)型授業」「探究(未来への扉)」「キャリア教育」の3本柱を掲げ、在学中の6年間のみならず、卒業後も主体的に生き抜くことのできる人を育成していますが、共学一期生の多くはこの学びを得て、大学の偏差値や知名度などにとらわれない、職業など大学卒業後の「なりたい自分」を見据えた進路を選択しています。

これからの社会で主体的に生き抜くための資質・能力を育てる3つの柱
「例えば、本校の新しい受験用自習スペース『ラーニングコモンズ』のデザインを提案した生徒会の生徒は、国際交流と空間デザインの可能性を研究したいと考え、国際基督教大学のアーツサイエンス学科に進学しました。航空会社のパイロットを希望する生徒が桜美林大学航空学科、鉄道について延伸計画を考えるほど詳しい生徒が日本大学理工学部交通システム工学科に進学するなど、自身のあり方を将来につなげた事例が多くありました」と共学一期生の担任を6年間務めた学校広報主任の山本英門先生も話します。
「かつては大学名にこだわり、同じ大学の複数の学部をいくつも受験する生徒もいましたが、現在は自分の生き方、あり方を主体的に考え、自己理解に基づいた進路を選んでいるため、そのような受験スタイルが少なくなり、早慶などの合格者の延べ人数は過去に比べると減っているかもしれません。しかし、結果として東大に5名、国公立大医学部に7名が合格するなどの実績を出し、現役合格も多くなっています。それぞれが自分を主語にしたアクティブな受験ができ、成功体験につながったはず。生徒たちの選択を心から祝福してあげられる結果となりました」(玉田先生)
新しい時代に必要な
6つの力
玉田先生は、同校が前述の教育の3本柱を通しての学びにより身につけたい、新しい時代に必要な力は、以下の6つに集約されると話します。

育成を目指す資質・能力~6つの力~
●協働力:人とつながる力、人を巻き込む力。
●エージェンシー:他人事ではなく自分のことにする力。
●チャレンジ力:一歩踏み出し、やり抜く力。
●キャリアデザイン力:未来を描き、人生を切り拓く力。
●思考力:客観的、創造的に深く考える力。
●探究力:自分のなぜを育て、追究する力。
生徒たちはこれらの力を6年間で身につけ、学びに向かう力と人間性を伸ばしていきます。
「今年も新1年生を迎え、入学から新しい時代を生きる力を伸ばすプログラムを行っています。本校では1年生から6年間、毎朝ホームルームの時間に1分間スピーチを行います。時期により決められたテーマに沿って、担当の日に1分間、クラスメイトの前で話します。全員に順番が回ってくるので、入学当初は話すことが苦手だった生徒もだんだん上手に話せるようになっていきます」と玉田先生。同校はAL型授業や探究の授業でも主体的に自分の考えを発表する場が多く、プレゼン能力が磨かれます。「5年生(高2)では『プレゼン型三者面談』を行い、担任の先生と保護者の前でなぜその大学を受験したいのか、自分の将来の夢やその希望に至るまでにどのような学びをしてきたのか、大学で何を学びたいのかなどをプレゼンします」(玉田先生)。また、「活動日誌」は、「授業のふり返りや家庭学習の内容などを記録していくもので、自己理解のきっかけにもつながっています」(山本先生)

3年生の「グローバル探究」の授業で全員が挑戦する模擬国連
3年生全員で行く海外研修など
グローバル教育も充実
同校では、3年生(中3)から4年生(高1)までの2年間を、学びを「深める」時期と位置付け、グローバル教育にも力を入れています。
「3年生の探究の授業で実施される『グローバル探究』もそのひとつ。それぞれに担当国が割り振られ、その国について調べると当時に自国への理解も深めます。最終的には学年全体で模擬国連会議(国連総会形式の会議)を行い、立場の違いを超えた全会一致での問題解決に挑戦します」と玉田先生は話します。
また、3年の学年末には学年全員で韓国の仁川外国語村で7泊8日の海外研修を実施。現地では英語漬けの毎日を過ごし、韓国の中学生と英語で交流します。互いに母国語ではない英語を使ってのコミュニケーションから学ぶことも多く、韓国のK–POP、日本のアニメーションなど互いに関心のある事柄についての文化交流も楽しみます。4年生、5年生になると希望者を対象にマレーシアへの語学研修から、アメリカへの5週間、ニュージーランドへの2週間の短期留学、1年間の長期留学まで多彩な海外プログラムが用意されています。また、普段の学校生活の中でも校内にネイティブの先生方が常駐するグローバルラウンジがあり、放課後に英語を話したり、英検の面接対策や留学の相談をしたりと活用できます。

4年生の希望者が参加するニュージーランド短期研修
自分と社会をつなぎ、
生涯学び続ける力を養う探究
同校の探究の授業は、1年生は身のまわり、2年生は学校のある横浜市青葉区、3年目はグローバル(模擬国連)、4・5年生は自分が立てたテーマで論文執筆と5年間でしっかりとしたプランを積み上げていく形で行っています。「本校の探究授業で大切にしていることはそれぞれの興味があることを大切にすることと、全員が当事者意識を持って取り組むこと。全員参加の意識を持たせるために優秀な発表をした生徒を表彰することは重視していません」と玉田先生。「一般の教科は先生が正解を知っているという前提で学びますが、探究は逆の思考力が必要。成果は見栄えよりもどのような思考力を身につけたのかであり、探究の授業を通して自分と社会をつなぐウェルビーイングについて考えます」(玉田先生)

よりよい自習環境を考えて、共学一期生の卒業生がデザインしたラーニングコモンズ
主体的に学ぶ環境で過ごしてきた生徒たちは、ラーニングコモンズを提案した卒業生のように、自分たちが学校づくりの主役になるということを常に意識しています。桐蔭学園中等教育学校の学校づくりは現在も進行中。ぜひ一度学校に足を運んでみてください。
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
桐蔭学園中等教育学校
[学校HP]https://toin.ac.jp/ses/
〒225-8502 神奈川県横浜市青葉区鉄町1614 Tel.045-971-1411
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