芸術教育で自分の内面と向き合い、仲間と共に取り組むことで絆を深める
自分を表現する勇気を得て、
仲間との絆を深める芸術教育
芸術教育に力を入れている聖セシリア女子中学校。同校の芸術教育は、技術の習得にとどまらず、自分を表現する勇気や他者と協働する姿勢を育みます。今回は同校のカリキュラムでも特徴的な、美術、英語劇、クラシックバレエの取り組みを取材しました。
多様な課題でさまざまな
表現技法を学ぶ【美術】
丁寧な美術指導に定評のある同校。中学3年間で基礎を学び、高校1年生は音楽、美術、工芸、書道から自分の興味に合わせて選択します。
聖セシリアの美術教育の特徴は、本物のあらゆる画材を使うこと、そして、多様な課題を設定することで多くの表現技法を学べることです。
中学3年生のこの日の授業では、立方体に補助線を引き、カットして製作する立体造形に挑戦。立方体のそれぞれの面で異なるイラストを描きつつ、全体としてひとつのテーマが浮かび上がる作品づくりという課題でした。先生の、「内面の表現につながるアイデアでもOK」という言葉に頭を悩ませ、何度も描いては消しゴムで消しながら下描きを行い、一人ひとりアイデアを先生に見せていく生徒たち。美術科担当の齋藤穂曇先生は、生徒のやりたいことを尊重しながら、「この曲線はカットするのが大変かも」「こうするのはどう?」と一人ひとりに丁寧なアドバイスを行っていました。
「中学生のなかには美術が不得意な生徒もいますが、苦手でも『がんばればなんとか課題をクリアできる』と達成感を感じてもらえるように、一人ひとりアドバイスを行っています」という齋藤先生。中高生ならではの感性も大切に、表現の楽しさを知ってほしい、と語ってくれました。生徒は自分自身と向き合い、試行錯誤を繰り返しながら、作品をつくり上げる喜びを感じます。毎年、美術やデザイン系の進路へ進む生徒がいることからも、中学からの美術教育で創作の楽しさを感じながら基礎能力を育んでいることがわかります。

生徒の表現したいことを丁寧にヒアリングしながら、アドバイスを行う齋藤先生

下描きができた生徒は立方体にカーボン紙で写し、ペンでなぞっていく。様々な材料を扱うことが同校美術の特徴

さまざまな画材や技法を使って制作された作品は長い廊下一面に展示されている
歌って踊って、気持ちを表現
【イングリッシュエクスプレス】
「イングリッシュエクスプレス」は、英語力だけでなく、表現力・主体性・協調性を育む特別な授業です。中学1年・2年生の必修科目で、全員が舞台にたち、英語劇を発表します。長年、イングリッシュエクスプレスの指導にあたっている、英語芸術学校マーブルズ代表の小口真澄先生は、「英語を、『勉強』ではなく、『自分を表現する言葉』として使うことを体験してほしい」と語ります。
この日の授業では、中学2年生が「オズの魔法使い」の練習に取り組んでいました。はじめはオリジナル台本のテキストを見ながらセリフの練習を行い、徐々に動きを加えて練習する生徒たち。恥ずかしがっていた生徒も、先生のパワフルな指導で徐々に大きく身体を動かせるようになっていました。
小口先生は、「毎年、生徒の個性に合わせて進めています。得意・不得意の差はありますが、『できない子が取り残されないように』を大事にしています」と語ります。
小口先生が大切にしているのは、英語力そのものよりも、「物語に入り込み、舞台の上で生きる」経験です。「自分が演じるキャラクターの気持ちや考えを理解し、その人になったつもりで自然にふるまうことで、自分の思いや考えを伝えようという意志が生まれます。間違ってもいいので、自分で一歩を踏み出せる強さを持ってほしい」と、語っていました。
また、生徒同士が互いに支え合い、協力して一つの舞台を作り上げるなかで、仲間と気持ちを通わせ、信頼関係を築くうちに深い絆が生まれるといいます。
自分で考え踏み出す力、仲間と協力しながら一緒に前へ進む経験は、人生そのものにも通じる学びです。
中1・中2の必修科目。
全員が舞台に立ち、年に2回、英語でミュージカルを発表する。

①まずは、新しい表現の発音と意味をみんなで確認!

②同じ役の仲間と一緒にセリフを声に出して練習!

③他の役のメンバーとチームを組んで、演技を実践!

④グループごとに、練習の成果をみんなの前で発表!
校内のスタジオで学友と
レッスン【セシリアバレエ】
セシリアバレエは、部活動としてクラシックバレエに取り組める、全国的にも珍しいバレエスタジオです。日々のレッスンは校内のバレエスタジオで行われ、経験者・未経験者問わず多くの生徒が参加しています。
中学1年から所属している部長の神田さんは「習い事のバレエとは違って、学校生活を共にする仲間と練習できるので、目標や苦労を共有できることが魅力」と語ります。同じクラスの仲間と放課後にそのままレッスンできる環境は、移動の手間がなく効率的で、部活として仲間との一体感も生まれやすいといいます。
副部長の赤坂さんも「学校内で習えるからこそ、他学年や普段接点のない生徒とも交流ができて、人間関係の幅も広がりました」と話します。曜日を選んで参加できる柔軟さもあり、学業や他の活動との両立もしやすい点も魅力です。
2年に1度、学校近くのホールで行われる発表会は一大イベント。神田さんはソロ演目を初めて担当し、「一人で舞台に立つ緊張感の中で、どう動けば伝わるかを常に意識しました。役になりきって、ストーリーを届けることの難しさと楽しさを感じました」と振り返ります。赤坂さんも「練習の中で、自分と向き合う時間が増えました」と話します。
発表会直前の4月には、全学年の部員が集まる合同練習が始まり、衣装を着ての通しリハーサルが行われます。限られた時間の中で一体感を築くこの機会は、全員でひとつの舞台をつくる醍醐味を味わうことができるといいます。
「日々のレッスンも発表会も、仲間と支え合いながら過ごしてきた時間が何よりの財産です」と神田さんは語ります。経験の有無を問わず挑戦できるセシリアバレエは、表現の楽しさと、人とつながる喜びを知る大切な場となっています。
美術や英語劇、クラシックバレエでは、完成を目指す過程で試行錯誤し、仲間と支え合います。舞台や作品づくりをやり遂げる中で、生徒たちは「伝える力」「創造する力」、そして「人としての成長」を実感していきます。芸術を通して得られる深い学びが、未来へ踏み出す力となっていくのです。

今年の発表会は、2日間にわたり海老名市文化会館大ホールにて開催。幼稚園から高校生までセシリアバレエに所属するメンバー全員が舞台に立つ

セシリアバレエに所属するおふたり。左から、部長の神田華凜さん(高3)、副部長の赤坂菫さん(高3)
※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。
聖セシリア女子中学校
[学校HP]https://www.cecilia.ac.jp/
〒242-0006 神奈川県大和市南林間3-10-1 Tel.046-274-7405
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