私学探検隊

創立110年を誇る女子教育の先端。鎌倉で日本を知り、世界へ羽ばたく!

創立110周年を迎える今も受け継がれている「真摯沈着」

今年度、創立110周年を迎える鎌倉女学院。創立当初から変わらずに受け継がれているのは、「真摯沈着」の精神。

鎌倉女学院の創立は、今から110年前の明治37年。明治期に創設された女学校は、ミッションスクールや裁縫塾から出発したものが多い中、同校は「真摯沈着」を校訓に、「宗教色をおびず、不偏中正の立場で、堅実な女子を養成し、日進の新知識を授けたい」という創立者・田辺新之助先生の理想のもとに開学しました。「真摯沈着」とは、「いつの時代にあっても、しっかりと自己をもち、付和雷同することなく、堅実に生きる女性」を指し、その思いは創立110周年を迎えた今も変わることはありません。
また同校では、このような伝統と校風を受け継ぐ一方で、「日進の新知識を授けたい」という創立者の思いを受け、常に時代の先を読み、“清新な風”も取り入れてきました。

時代を先駆け70年代から取り組んできた国際交流

1977年からはじまった海外姉妹校プログラム。同校では、アメリカペンシルバニア州の高校と姉妹校提携をしています。

それを表すものとして、同校では1970年代に、実践的な英語教育と国際理解教育を目的に、他校に先駆けて、JAPIU(日本国際理解推進協会)が主催する「海外姉妹校交流プログラム」に参加。姉妹校であるアメリカペンシルバニア州にあるパーキオメン・バレー高校との交流は、35年以上も続いています。この海外姉妹校交流プログラムには、派遣プログラムと受け入れプログラムがあり、派遣プログラムでは現地の家庭にホームステイをしながら、姉妹校の授業に参加。受け入れプログラムでは、同校の授業に参加しながら、日本の文化を紹介しています。
また、1993年からは、高1の希望者30名を対象に「カナダ英語研修」もスタートしました。この研修は、同校で長年英語講師を務めていた先生が、母国カナダ・トロントの教育委員会の協力を得て企画した、鎌女生のためのプログラム。3週間のプログラムは、「ホームステイ」「アウトドア活動」「東部歴史学習バスツアー」の3つのパートから成り立っています。生徒たちは、この3つのパートを通して、英語、そしてカナダの文化と歴史を学びます。同校では、このように国際交流を通じて、英語力の向上とグローバルな視野を養ってきました。

ドメスティックこそがインターナショナルの出発点

姉妹校からの受け入れプログラムでは、習字や茶道などの日本文化を紹介しています。

中1の「鎌倉学」で体験する鶴岡八幡宮直会殿での雅楽鑑賞。

しかし、これらの国際交流を続ける中で、改めて感じたのは、「ドメスティックこそが、インターナショナルの出発点」であるということ。海外に行くと、私たちは常に日本人の代表として見られ、さまざまな意見を求められます。海外研修は英語の習得や他文化を体験するだけではなく、日本について発信する場でもあり、異文化を理解し、それと共生するためには、まずは自分が暮らす地域や自国の歴史や文化の理解が不可欠であることに気づかされました。
そこで始めたのが、鎌倉を通して日本の自然や産業、歴史、文化を学ぶ「鎌倉学」です。同校は、幸運にも古都鎌倉の中央に位置する絶好の環境にあり、キャンパスを一歩出れば、海や山、寺社などがあります。また、伝統的な文化を伝承している人から、日本を代表する企業で働く人まで、地域の人々の生活が多様化しており、自国の文化や歴史、産業を知るには最適な町です。「鎌倉学」では、まさに鎌倉の町すべてが鎌女生のキャンパスとなります。
中1では、グループごとにコースを決め、1万分の1地図を手に、地形や町の様子を知る「地図を持って歩く」をスタートに、鎌倉で働くさまざま人を訪ねる職場見学や体験を行い、中2では、日本文化理解の基礎として、地域の歴史や文学を学んでいきます。そして、中3で鎌倉文化のルーツである奈良・京都を訪れ、日本文化の特色を学びます。
こうして、まずは中学生のうちに日本について学び、その上で世界に目を向けていきます。生徒たちは、日本について学びながら、今、日本が抱えている問題や、それに関連する世界、地球の問題にも気づくようになります。

国際・環境学をテーマにグローバルな視点をもつ

中学の3年間で日本について学んだ後は、日本から世界へ。高校では、グローバルな視点をもって、地球温暖化やオゾン層の破壊など、地球環境を取り巻く諸問題や、政治や宗教などを背景とした世界情勢について考えます。それが、同校の「国際・環境学」です。
高1の「入門講座」では、国際・環境学の基礎として、国内外で活躍している方たちにレクチャーをしていただき、最前線の国際情勢について関心を高めます。次の「国際セミナー」では、湘南国際村を利用して、実際の会議と同じように、国際会議の模擬体験をします。23年度のテーマは、「わたしたちに出来る国際貢献」でした。
高2では「沖縄研修」へ。高1での国際理解の学習をふまえ、一人ひとりが沖縄に関するテーマを設定し、体験的な学習を通して、比較文化の視点からレポートを作成します。そして、高2、高3の英会話(選択)では、ディスカッション、ディベート、プレゼンテーションなどを重ねながら、社会・国際・環境問題に取り組む「グローバルスタディーズ」をはじめ、海外からのゲストスピーカーによるレクチャーを通じて、他国の生活や文化、歴史、教育、政治、国際問題などを共に考え、グローバルな視野を養っていきます。
さらに、中高の6年間を通じて、平常の授業以上にもっと深い知識を深めたいという生徒を対象に、「土曜講座」を実施。鎌倉ならではの講座を含めた日本文化理解や異文化理解、自然科学探究など、さまざまな分野についての教養を深めることができます。

中2の「鎌倉学」では、鎌倉文学館を訪れ、鎌倉にゆかりのある作家について学びます。

中1を対象にした「土曜講座」では、考古学体験もできます。


受信型から発信型へ 鎌倉から世界へ発信!

同校では、このように中高の6年間に、「鎌倉学」「国際・環境学」という独自の総合プログラムを通じて、さまざまな学習をすることができます。しかし、これまでは、「鎌倉で世界を受信する」ことにコンセプトがおかれ、多くの方に教えていただくばかりでした。そこで、2年前から新たに「鎌倉から世界に発信する」をテーマに、「鎌倉学」「国際・環境学」の更なる充実を図り、受信型のプログラムから発信型プログラムへと発展させています。
具体的には、これまでさまざまな学びをさせてくれた鎌倉の町で、これからの未来を考え、若い世代の意見として鎌倉市長と懇談会を実施したり、フェアトレード団体のネパリ・バザーロと協力して、ネパールの紅茶農園の子どもたちへ教育支援を行ったりしています。
こうして、鎌倉で日本を知り、世界に目を向け、そして鎌倉に戻り、自分たちにできることは何かを考え、グローバルな視野をもった「地球市民」として、社会に貢献できる力を身につけていきます。

鎌倉女学院中学校
[学校HP]http://www.kamajo.ac.jp
〒248-0014 神奈川県鎌倉市由比ガ浜2-10-4
☎ 0467-25-2100
最寄駅/JR湘南新宿ライン(横須賀線)・江ノ島電鉄線「鎌倉駅」徒歩7分。