私学探検隊

生徒が株式会社を設立してビジネスの基礎を学ぶ品川女子学院独自の文化祭

社会的意義も重要な起業体験プログラム

毎年9月に行われる品川女子学院の文化祭。「白ばら祭」と呼ばれるこのイベントは、行事の多い品川女子学院の中でもとりわけ生徒が熱心に取り組むことで知られています。中でも特徴的なのは高校1・2年生が行う「起業体験プログラム」。一見すると模擬店や飲食店なのですが、各クラスで株式会社を設立。ビジョンを持って事業を展開し、きちんと利益を出すことを目標としています。
1学期が始まる前から生徒各自が白ばら祭で行いたいことを考え、クラスで方向を決めます。その内容に沿った事業計画書の提出、会社の登記、プレゼンテーションといった過程を経て、当日の販売を体験するのです。また事業を計画する際に重要になるのが、社会的な意義です。エコを推進する、途上国の支援になる、町興しをサポートするなど、各クラスがテーマを設定。単に物を販売するのではなく、そうしたテーマのアピールにも努めます。
さらに事業内容によっては企業とも打ち合わせを行い、商品選びや価格設定なども体験。ときにはコラボレーションによってオリジナル商品の製作を行うこともあります。また株式会社ですから、投資家を募ることも重要。事業計画が固まった段階で投資家へのプレゼンテーションを行います。ここでは大学生となった卒業生や保護者がVC(ベンチャーキャピタリスト)やアドバイザー役となり、プレゼンを聞いた上で出資額を決めます。卒業生はこのプログラムの経験者なので、プレゼン内容にも厳しい意見が続出します。このほかにも株券の発行や定款、登記簿作成などを体験。もちろんこれらの「業務」と並行して模擬店の準備も進めなければなりません。夏休みも協力企業との打ち合わせや、商品手配などで忙しく過ごす生徒たち。こうした入念な準備を経て、白ばら祭の当日を迎えるのです。

厳しい質問も飛ぶ株主総会

総会までに会計などの準備を行う生徒たち

起業体験プログラムの流れ
4月 オリエンテーション
企画内容検討、
企画書提出
5月 プレゼンテーション
説明会
6月 事業計画提出
プレゼンテーション
7月 会社設立について学習
9月 「白ばら祭」開催
会計監査準備、株主総会
10月 表彰式

 

白ばら祭終了後には監修役を前に株主総会が

また、起業体験プログラムは白ばら祭で模擬店を開催して終わり、ではありません。2日間の白ばら祭が終了した翌日には、株主総会が開催されるのです。総会が開催されるのは午後ですが、生徒たちは午前中いっぱいをかけて決算報告書を作成。現役の公認会計士や税理士である保護者によって構成された監修役やVCに対して説明を行うのです。事業概略の報告や損益計算書と貸借対照表の説明や配当金額の報告がされ、質疑応答が行われます。ここでも監修役の方から「価格設定が適切だったか」など、細かな質問が飛びます。生徒からも1日目の反省点を踏まえ、2日目に改善した部分などの説明がなされます。最終的に株主の承認を得たうえで、各株式会社は解散となるのです。そしてこの結果を踏まえ、約1週間後に内容の優れたクラスが表彰されます。今年度は盲導犬の現状を紹介し寄付を募った高校1年のクラスと、ピンクリボン活動をピーアールするために人気ドーナツ店とコラボレーションした高校2年のクラスが同点で1位となりました。

クラブの発表も充実

人気の店には行列が

早大へフェアトレードについて聞きに行ったクラスも

合唱部はアカペラに挑戦


企業や団体とのコラボも体験 大きく成長する生徒たち

左から大野毬奈さん、太田朱美さん、佐伯香帆乃さん

今回は、1位となった高校1年のクラスの生徒からお話を伺いました。「私たちのクラスでは、盲導犬の現状について知ってもらいたいと思いました。いろいろと調べてみると、日本では盲導犬が非常に少ないこと、育成にかかる費用の9割が寄付によって賄われていること等を知ったのです」と太田朱美さん。今回は株式会社サンリオのキャラクターの1つが、盲導犬の代表的な犬種と一緒ということが分かり、交渉を開始。そのキャラクターを利用したオリジナル商品を作成しました。大野毬奈さんによると「ミニタオルを作り、価格も中高生が気軽に買える500円に設定」したそうです。ワンコインで買えることは、販売時の作業負担を減らすことにもつながるのだとか。こうした戦略が功を奏し、ミニタオルは2日間で1200枚を販売。また実際の盲導犬と接したり、点字ブロックを体験したりするコーナーを設置。来場者に盲導犬の現状を知ってもらういい機会となりました。売り上げや利益だけでなく、こうした取り組みも評価されたのでしょう。「以前は知らなかった会社の仕組みがよく分かった」という佐伯香帆乃さん。また白ばら祭が終了しても、株主総会でのプレゼンテーションのための準備があります。会計報告やこのプラグラムを体験しての総括などを発表資料にまとめなければなりません。「総会でのプレゼンは緊張した」という太田さんですが、会場の写真や売り上げ数字を的確に見せたプレゼンは監修役にも好評だったようです。
2日間で約8500人もの来場者を集めた今年度の白ばら祭。広報部長の平川悟先生によると「この起業体験プログラム以外にも、クラブでの発表を行う生徒も多数います。また実行委員が約200名おり、これは中1から高2までの生徒の5分の1にあたるんですね。厳しいスケジュールの中で多くの課題に取り組むことは、生徒のプラスになると思います」とのことでした。また、大学へ進学しても、学園祭の実行委員などを務めたり、就職して企画などの仕事に就く卒業生が多いとのこと。生徒が自主的に多くのことに挑戦する品川女子の中でも、非常に特徴的な取り組みだと感じました。

品川女子学院中等部・高等部
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