私学探検隊

iPadを導入した桜丘中学校が、その活用例を公開授業はもちろん、クラブや普段の学校生活など生徒たちの毎日にiPadは自然と馴染んでいました

iPad導入の成果を教育関係者に公開

先生から説明を受けながら、いざ、「開封の儀」(パッケージを初めて開けること)。緊張しつつも自分専用のiPadを手にしたことで、どの生徒もドキドキ、ワクワク。

電子黒板などのICT教育が浸透してきたなかで、今注目されているのがタブレット型端末を使用した授業です。多くの学校が興味を持つ一方で、効果的な活用方法に悩んで導入に踏み切れていないのではないでしょうか。保護者側にも、遊びに使うだけなのではといった不安があるかもしれません。こうした中、桜丘中学校は昨年度から教員が、そして本年度から中高の新入生全員がiPadを所有し、授業や学校生活に役立てています。
そんな桜丘では、iPadと同時に採用した情報共有・学習支援ツールアプリ「サイバーキャンパス」の活用事例を多くの方に見てもらおうと、7月に学校・教育関係者を招いて、公開授業が開催されました。「iPadが学校に来ると教職員と生徒はどうなるのか」と題し、模擬授業や教職員・生徒による発表などで活用事例を紹介していきます。
英語の授業では、サイバーキャンパスの画面上に出された選択問題を解き、解答を即座に自動集計。正解率の低い問いを補う授業をすぐするなど、アプリの特性を生かした事例はもちろん、先生がiPadに取り込んだ問題や資料を黒板に投影して授業を進めるといった使い方も見られました。またHRの実践例では生徒がアプリを使って、学園祭に関するアンケートを集計する方法などを説明。先生からは大学の入試問題のように大量に印刷しなければいけないプリントも配信すれば済むので、助かっているといった意見がありました。このほか、遠足や校外実習へ行った際などに、その様子を帰りのバスの中で先生が動画にまとめ、その場で生徒に配信するといった例も。これはクラスの一体感を高めるために役立ち、何より保護者の方に大変喜ばれているそうです。

iPad活用の前にまず学習習慣を身につける

既に家庭でiPadに触れたことのある生徒もいるので、使い方を生徒同士で教え合うことも。初めてでも、すぐにサクサクと動かし始めます。

iPad導入に関して、先生はどのように感じているのでしょうか。地理を指導する藤岡和宏先生は「iPadがあれば、サイバーキャンパスのメール機能で連絡をしたり、板書をせずに黒板に文字を投影したりすることも可能です。ただ、その前にまずはきちんと人と話す、自分でノートにまとめるといった習慣を身につけることが大事。高校1年生にはある程度自由に使わせていますが、中学1年生の場合は教員のほうで用途を限定して使うようにしています」と語ってくれました。当初はゲームなどに没頭してしまうのではないかと導入にも懐疑的だった藤岡先生。ただ、実際に導入してみると、想像以上に生徒の中でのルール作りができているとのこと。今は導入して良かったと思っているそうです。また英語を担当するロビンズ先生によると「サイバーキャンパスのメール機能は教員に質問する良いきっかけにもなっていて、それをベースに次回の授業を展開することもある」そうです。
春からiPadを使い始めた中学1年生にも聞いてみました。Aくんは授業を復習する際の検索に使用したり、所属している囲碁将棋部でプロ棋士の指し順をチェックしたりするのに使っているそうです。また、意外な使い方を教えてくれたのがIさん。板書したノートを撮影し、手書き機能を使って、覚えたい部分を線で隠して復習に使用しているそうです。普通であれば遊びに使う機能を、勉強に役立てる。中学生はこんな独自の使い方を、自分たちで見つけてしまうようです。

創意工夫で活用法を見つける生徒たち

学校公開日には、先駆けて導入しているiPadの活用方法を知ろうと、学校関係者のほか、教育関係者、一般企業などが全国から参加。実際の授業を見学したり、サイバーキャンパスの使用例の説明を聞いたりしました。最近では新聞にも載るなど、桜丘の取り組みに注目が集まっています。

今回のiPad&サイバーキャンパス導入に関して副校長の品田先生からは「うちは特別なことは何もしていません」というお話がありました。ただ、まずは教職員と生徒が持つことで、「便利な使い方」が自然と生まれてくるのだと感じました。中学生にiPadを持たせることに不安を感じる保護者の方もいると思いますが、桜丘では「生徒とiPadの最適な距離感」について、先生方が常に気を配り、それが良い結果につながっています。このようにして早い時期から情報機器と上手に付き合っていくことが、大学生、社会人になった際にも大きな力となるのではないでしょうか。iPadを手にした中学1年生の今後が、とても楽しみです。

iPad&サイバーキャンパスの桜丘流利用方法をリポート!
調べる、作る、つながる……。さまざまな使い方ができるiPadだから、授業での活用法も実に多彩。そんな桜丘での事例を紹介します。

サイバーキャンパス
iPadを有効に活用するツール
桜丘がiPad導入と同時に採用した、情報共有・学習支援ツールが、この「サイバーキャンパス」です。教職員と生徒双方からの情報発信や、スケジュールの管理・共有などが可能。また授業動画のストリーミング配信といったことにも活用できます。桜丘ではこのサイバーキャンパスを使って連絡事項の配信、クラス全体の掲示板などオープンな使い方や、生徒が教員に直接メールを送るといったパーソナルな使い方も可能。コミュニケーションが円滑になるだけでなくペーパーレスにも役立っています。

英語
クイズ形式で授業が盛り上がる!
中学校ではサイバーキャンパスを使って英単語のテストに挑戦。結果が即座に表示されるのでクイズのように盛り上がります(写真上)。高校ではプロジェクターと接続して長文をホワイトボードに投影。そこに先生が書き込みながら解説するなど、授業を効率的に進めていました(写真下)。

地理
目で耳で、世界を理解する
写真や動画で世界を知る。そんな地理はiPadの特性を生かしやすい科目です。例えば海外の寺院について学ぶ際にも、写真を見るだけでなく、実際の音を再生させることで、より深く理解することが可能。また地図ソフトで万里の長城の長さを調べるといった使い方もできます。

 

数学
ノートのようにiPadを活用
さまざまな使い方ができる点がiPadのいいところ。高校の数学ではテキストボックスのほかにタッチペンで記入するなど、生徒が自在に使っていました。また生徒の解答例を電子黒板やプロジェクターを使って映し出すといった手法も、iPadならではといえるでしょう。

クラブ
フォームの確認以外にもフル活用
録音・録画機能が、クラブ活動でも大いに役立っているiPad。プロジェクターと連動させてサッカー部のフォーメーションの説明や、少林寺拳法部の型の指導など、活用方法は想像以上。多くのクラブが試合前や練習時に使用しています。

行事
事前学習の下調べでも大活躍
例えば中学1年生は夏休みに筑波宿泊研修に参加します。そこで事前学習を行いますが、生徒自身がiPadを使って研修先についてチェック。事前に情報検索を行うことで、生徒一人ひとりの宿泊研修に対する意欲もアップしそうです。

桜丘中学校
[学校HP]http://www.sakuragaoka.ac.jp/
〒114–8554 東京都北区滝野川1–51–12
☎ 03–3910–6161
最寄駅/都電荒川線「滝野川一丁目」徒歩1分。JR京浜東北線「王子駅」徒歩7分。メトロ南北線「王子駅」・都営三田線「西巣鴨駅」徒歩8分。JRなど「池袋駅」からバス「滝野川二丁目」徒歩2分ほか。