私学探検隊

ワールドカフェ方式を採用した「道徳」の授業と 「自立したひとりの人間に育てる教育プログラム」

独自の人間教育の理念と新教科「道徳」を融合

日本大学第一中学校は1913年、江戸情緒が残る下町・両国に日本大学の最初の付属校として創設されました。現在では例年、卒業生の約75%が日本大学に進学し、約20%がその他の難関大学への道を選びます。校訓は「真・健・和」。教育理念は「絆を重んじ、良き生活習慣をもった、次世代人の育成」。
地に足の付いた人間教育を掲げています。そのコンセプトに則った中高6年間におよぶ一連の教育活動を「パーソナル・ディベロップメント・プロジェクト(人として成長するプロジェクト)」と総称し、これまでも教育の核として取り組んできました。
学習指導要領の改訂により、2019年度より中学校で「道徳」が教科化されましたが、日本大学第一中学校にはもともと「パーソナル・ディベロップメント・プロジェクト」がありました。どうせなら「道徳」を同校のユニークな授業としてデザインし、中学3学年の時間割に組み込もうということになりました。
「道徳」の教科化については社会的に賛否の議論があります。本来「道徳」は教師から生徒に教え込むべきものではないからです。そこで同校では、道徳の授業を「ワールドカフェ」スタイルと呼ばれる方式で行うことにしました。

生徒たちが自ら授業を進めるアクティブラーニング

ワールドカフェのスタイルに則った話し合いでは、生徒たちが普段の授業では見せることのない輝きを見せることがある。

ワールドカフェのスタイルに則った話し合いでは、生徒たちが普段の授業では見せることのない輝きを見せることがある。

クラスを5~6人ずつの班に分け、それぞれの班に進行係を決めます。「道徳」の教科書のテーマをそれぞれに読んだうえで、班の中でメンバーが意見を発表します。このとき、ほかのメンバーは決して意見を否定してはいけないというのが重要なルールです。その後、班長以外のメンバーは他の班に散らばり、それぞれの班で自分たちの班を発表。さらに再び元の班に戻り、それぞれに聞いてきた各班の意見を集約し、班としての考えを深めます。議論が終わった時点で、「道徳ノート」に自分の考えを記入し、時間があれば、各班の意見をクラス全員の前で発表する。
生徒たち自身が授業を進めるのです。教師はタイムキーパー的な役割をしたり、議論が混乱したときに整理するための助け船を出したりするだけです。
「実際に生徒たちにやらせてみると、思った以上に議論が活性化しました。普段はあまり自分の意見を言わない生徒でも、場を与えられることで自分の思いを表現することができます。すると、まわりの生徒たちも『このクラスメイトは引っ込み思案なだけで、本当はこんなにしっかり考えていたんだ!』という発見をします」と漆原郁夫先生は言います。
中1の担任の神谷駿一先生は「13歳くらいではまだ、つい無意識のうちに、みんなも自分とだいたい同じ感覚をもっているはずだと思い込みがちです。でも実際に他人の意見を聞くことによって、同じテーマについて考えていても、人によって意見が大きく異なることも多いと知ります。まさに十人十色を実感するのです。中1の時点でこの経験をして視野を広げることは、その後のクラス運営やパーソナル・ディベロップメント・プロジェクト活動の大きな土台となるはずです」と言います。
新しい教育活動を、もともとある教育理念に照らし合わせ、なじませながら取り込んで、新しい価値を創造する。同校のもつ教育理念の懐の深さを表しているようなエピソードです。また、教師が生徒に押しつけるのではなく、生徒の良いところを引き出しながら導くスタイルの教育方針の表れともいえるでしょう。

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

日本大学第一中学校
[学校HP]http://www.nichidai-1.ed.jp/
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