私学探検隊

最先端の「知」にふれる「大学訪問授業」で 知的好奇心を刺激し、進路を考える

第一線で活躍する先生が出張授業!

真剣に聴き入る生徒たち。保護者が聴きに来ることも

真剣に聴き入る生徒たち。保護者が聴きに来ることも

2004(平成16)年に始まった「大学訪問授業」は、政治・経済・哲学・文学・科学など、幅広い分野で第一線で活躍する先生を講師に、土曜日の4時間目に同校で行われる授業です。今年度も下の表にあるように錚々たる先生方が桐光学園で講義を行う予定となっています。
先生の人選から依頼までを行う教頭の中野浩先生は、「勉強というと、中学受験とか大学受験の『手段』だったり、『難しそう』というマイナスのイメージしかないですよね。でも、大学訪問授業で講義を聴くと、『学問ってなんだか楽しそう』と感じる中学生が多いようです」と言います。
さらに、大学訪問授業をきっかけに大学で学びたいものが見つかったり、学びたいもので受験校を決めたりする生徒もいるとか。進路指導としての役割も果たしています。

2017(平成29)年度 大学訪問授業

月日 肩書き・大学 講師(敬称略) 内容
第1回 4月15日(土) 作曲家、ピアニスト 高橋 悠治 きっかけの音楽(質疑応答形式)
第2回 4月22日(土) 宗教学者、東京大学大学院名誉教授、上智大学特任教授・グリーフケア研究所所長 島薗 進 “いのち”をつくってもいいですか?
第3回 5月 6日(土) 歌人、小説家、脚本家、早稲田大学教授 東 直子 言葉を友達にする方法
第4回 5月13日(土) 政治学者、政策研究大学院大学教授 飯尾 潤 デモクラシーは生き残れるか
第5回 5月27日(土) 建築史家、風俗史研究者、国際日本文化研究センター教授 井上 章一 海のむこうで、日本を考える
第6回 6月 3日(土) 日本近代文学研究者、早稲田大学教授 金井 景子 「アライ」になろう!−LGBT問題を一編の詩から考える試み−
第7回 6月 7日(水) 東京大学大学院教授 大島 まり 夢を紡ぐ−拡がるエンジニアリングのすそ野−
第8回 6月10日(土) 教育社会学者、つくば市教育長、元筑波大学教授 門脇 厚司 社会力育てが教育と社会を救う
第9回 7月 5日(水) 詩人、翻訳家、絵本作家、脚本家 谷川 俊太郎 谷川さんにいろいろ聞いてみよう(質疑応答形式)
第10回 7月 8日(土) 歴史学研究者、日本女子大学教授 成田 龍一 歴史的に考えるとは
第11回 7月15日(土) 政治学者、日本女子大学・同大学院教授 臼杵 陽 中東イスラム世界とのつきあい方―「12世紀ルネサンス」からIS問題まで
第12回 7月29日(土) 化学者、ノーベル化学賞受賞、パデュー大学特別教授 根岸 英一 Pursuit of My Dreams for Half-a-Century(大きな夢を持ち、それを追い続けよう)
第13回 8月26日(土) 小説家、法政大学教授 中沢 けい 私と文学の出会い
第14回 9月 9日(土) 近代文学研究者、慶應義塾大学教授 小平 麻衣子 何のために文学を読むのか−教育と教養と趣味の関係
第15回 10月 7日(土) 経済学者、東京大学教授 玄田 有史 働くこと 生活すること 生きること
第16回 10月14日(土) 作曲家、ピアニスト 一柳 慧 多様な違いを学ぶ―脱エンタテーメント
第17回 10月28日(土) 比較文学者、詩人、元城西大学学長 水田 宗子 3.11の震災後の日本文化を生きる;若者たちの選択
第18回 11月 4日(土) 小説家、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授 磯崎 憲一郎 小説とは何か?
第19回 11月11日(土) スラヴ文学者、東京大学大学院教授 沼野 充義 文学は何の役に立つのか?−「ポスト・トゥルース」の時代のことば
第20回 11月18日(土) 経済学者、法政大学大学院教授 水野 和夫 資本主義の終わり
第21回 11月25日(土) 詩人、日本藝術院会員 吉増 剛造 イチドカギリノコトバノスガタ
第22回 12月 9日(土) 美術家、多摩美術大学名誉教授 李 禹煥 芸術家という生きもの<1月に変更の可能性あり>
第23回 12月20日(水) ミュージシャン、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、ピアニスト、キーボーディスト 坂本 龍一 音楽は自由にする、質問は自由にする(質疑応答形式)
2016(平成28)年度記憶に残った授業
「昨年は20名の先生に来ていただきましたが、共通のテーマは『これからの社会でどう生きていったらいいのか』というものでした。このテーマは中学生にもわかりやすかったようで、好評でした」(中野先生)
中野先生に昨年、とくに印象に残った先生の授業を5つ挙げていただいた。
ちなみに、昨年の大学訪問授業は『高校生と考える 人生のすてきな大問題』(左右社)という書籍にまとめられている。
加藤典洋先生(文芸評論家・早稲田大学名誉教授)
テーマは「人、人に出会う」。人生の中で最も大きなできごとは「人と出会うこと。出会いから『学び』も生まれる」と言う加藤先生。人との出会いは偶然ではなく、必然。どんな人に出会うかは自分の努力(準備)も必要だと話された。
田原総一朗先生(ジャーナリスト)
田原先生の講義には1200~1300名という聴衆が集まり、抜群の注目度。講義の内容は自身の半生と、その時々の世相について。マイク一つで長時間立ちっぱなしで講義をされていたのが印象的だった。
内山節先生(哲学者・立教大学教授)
テーマは「考えはどこから生まれてくるのか」。内山先生は自らを「研究者ではない。哲学者である」と言う。そして、群馬県上野村での生活や「考えることが好き」といった話をされていた。
佐伯啓思先生(経済学者・思想家・京都大学名誉教授)
長い期間、講義をお願いし続け、ようやく実現。「『知る』ことを『考える』こと」をテーマに、「知ること」と「考えること」のバランスのとり方について話された。
竹宮恵子先生(漫画家・京都精華大学学長)
代表作『地球(テラ)へ…』の原画などを見せてもらう。女性漫画家が珍しかった時代に漫画家になったことへの世間の評判。しかし、そんななかでも「好きだから」続けてきたという話に生徒も興味津々。
2017(平成29)年度注目の授業

本年度は12月まで23回の大学訪問授業が予定されている。右の表をよく見てほしい。錚々たるメンバーのなかでも、中野先生が注目する3名の先生とその注目ポイントを紹介する。

注目1谷川俊太郎先生
(詩人、翻訳家、絵本作家、脚本家)
何年もアプローチをした結果、「講義という形ではなく、生徒からの質問に答えるという形であれば」と引き受けていただいた。谷川氏の作品は教科書にも掲載されているので、生徒たちには馴染み深い。そんな彼らが谷川先生にどんな質問をするのか。注目したい。
注目2根岸英一先生
(化学者、ノーベル化学賞受賞、パデュー大学特別教授)
2010(平成22)年、ノーベル化学賞を受賞。同校の理事長が湘南高校合唱部のOB会に出席した際、同じくOBだった根岸氏に声をかけた。後日、大学訪問授業の講師依頼のため、アメリカに帰国した根岸氏に再度連絡をすると、夏に来日の予定があるとのこと。夢をもつことの大切さを話してくれることだろう。
注目3坂本龍一先生
(ミュージシャン、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、ピアニスト、キーボーディスト)
坂本氏も質疑応答形式での講義を希望。ただ、質疑応答だけではなく、「ピアノも用意したい」(中野先生)とのことで、もしかしたら演奏も聴くことができるかもしれない。12月20日に実施予定の授業。生徒たちにとって大きな大きなクリスマスプレゼントになるかも。
書籍も要チェック!

1年間の講義の内容は、毎年春に1冊の本に《最新刊は「高校生と考える 人生のすてきな大問題」(左右社)》。また、テーマごとに編集し直したものが『中学生からの大学講義』(ちくまプリマー新書)シリーズとして発行されている。なお、これらの書籍から高校入試問題として採用されたこともあるのだとか。中高生はもちろん、大人にもオススメしたい内容だ。
【最新刊】2017年4月30日発行。左右社刊・1700円+税
【新書判】筑摩書房刊・820円+税

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

桐光学園中学校
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