私学探検隊

理想の環境で取り組む昭和学院の図書館学習。 その目的は可能性を広げ、生きる力につなげること

創立以来、校舎の真ん中にメディアセンター(図書館)を設置している昭和学院。生徒を育むには図書を必須とし、「明敏謙譲」を建学の精神とした創立者の理念を継承しています。読書や図書館学習をどのように実践しているのか、その取り組みについて国語科の高原良江先生と司書教諭の山崎登子先生、そして二人の生徒たちからお話を伺いました。

目的は読書の習慣づけだけではない。3年前からスタートした朝読書

毎朝、授業開始前の20分間で行われる「朝読書」の様子

毎朝、授業開始前の20分間で行われる「朝読書」の様子

始業前の20分間に行う「朝読書」は、生徒の読書欲を引き出し自己の可能性を広げることが大きな狙いです。1学期は乱読、2学期と3学期は全教科の先生方が推薦する100冊の中から読むことが課題です。リストは『読書の旅、羅針盤』で生徒に配布されますが、物語、小説、詩集、スポーツ伝、社会派ドキュメンタリーなど、そのジャンルの幅の広さに、生徒の主体性と個性を尊重する同校らしさが感じられます。
小学校まで読書が大の苦手だったというバスケット部の平良道爽くん(中2)は、山田悠介の作品によって読書の世界に引き込まれました。

「最初は兄から勧められました。読んだら怖かったけど入り込んでしまい、本を読む楽しさを知りました。似た作品で、違う作家の本も読んでみたいと思ってます」と話してくれた平良くんは、今では国語の長文問題にも入り込んでしまうとか。
「映画とはおもしろさが違い、本からこれだけの感動が得られるのだと知りました。読んだあとは目に入る世界が変わってました!」と、以前から読書は好きだったという秋元美空さん(中3)は、映画がきっかけで『永遠の0(ゼロ)』(百田尚樹)を読み、本が映画以上の感動を与えてくれた喜びを話してくれました。

「入りやすいものとして、スポーツ選手の自叙伝やドラマの原作など、興味に重なる本は必ずあるはずです。そこから何かを得て視野が広がれば、別の興味へとつながり、生徒たちの内面世界が広がります」(高原先生)
「朝読書」を始めてから生徒たちが一時限目の授業に入りやすくなったことから、読書が精神的な安定にもつながることを高原先生は実感しているそうです。国語に限らず、各教科でも理解力の伸びにより、論理的思考力、言葉で考える力、想像力が育まれるという成果が表れているとのことです。

生徒主体で行われるビブリオバトルが、読書の世界をさらに広げる

「ビブリオバトル」とは、人に推薦したい本のプレゼンテーションを対決形式で行う書評合戦です。出場者は、質疑応答やディスカッションにも応じなければなりません。
同校ではビブリオバトルを国語の授業に組み込み、1学期にはグループ単位で、2学期にはクラス単位で行い、クラスで優勝を勝ち取った代表者は、年度末に伊藤記念ホールで行われる生徒会役員が率いる全校ビブリオバトルに出場します。

「全校のバトルは毎回とても盛り上がります。上級生の優れたプレゼンテーションに下級生は刺激を受けるようです」(高原先生)
クラス代表者を経験した平良くんと秋元さんは、ビブリオバトルで人から共感される喜びを知り、本を熟読するようになったと言います。
「“これは人にアピールできる!”と思ったら、どうやったら伝わるか考えながら本を何度も読み返します」(平良くん)
「何を質問されても答えられるように何回も読み返します。あらすじを知ったうえで読み直す本には、新しい発見や別の視点があることを知りました」(秋元さん)
伝える相手を想定することでコミュニケーション能力が養われ、表現力が育ちます。また、複数の人が同じ本をアピールするシーンに出くわせば多角的視野をもつ大切さも学びます。

図書館と連携した「調べ学習」で実践されるアクティブラーニング

同校が6年前から積極的に取り組んでいる 「調べ学習」とは、生徒がグループになり課題にそって図書やインターネットから情報を集め学ぶプログラムです。インターネットを図書から得た情報と照らし合わせつつ補足的に活用することで、情報を精査することも学びます。各教科の授業にはもちろん、校外教育や文化祭などの行事も課題となります。

3年生が校外教育の際に作成した「京都&奈良新聞」も館内に掲示されていましたが、その視点や表現の多様性から、同校の生徒たちの豊かな個性と創造性がうかがえます。
調べ学習は、一連の作業を生徒たちが主体的に行う、まさにアクティブラーニングの実践であり、チームを組んで行われることで、協働性も養われます。

「メディアセンターで行う授業では、知らなかった本との出合いから思わぬ発見があります。部活で忙しく普段はなかなか図書館に行けない生徒も、生き生きと楽しみながら取り組んでいます」(高原先生)
不足している図書は司書の山崎先生がリクエストに応じて取り寄せ、既存の図書は情報として古いかどうか定期的にチェックし、コンピュータで管理されています。司書の先生が常駐し、約7万冊もの蔵書を有する同校のメディアセンターは、調べ学習に理想的な環境といえます。

ネットやメディアからの膨大な情報も、受ける側がそれを精査し消化しなければ意味をもちません。同校のこうした取り組みは、これからの時代に生きる生徒たちの英知と人間力の育みという大きな目標に向けて実践されています。

校舎の真ん中にあるメディアセンター

テレビもゲームも楽しいけれど、それとは別の楽しみが増えたことが嬉しい!
平良道爽くん(中2)
『永遠の0(ゼロ)』を読んで、目に入る世界が変わりました!
秋元美空さん(中3)

約7万冊の蔵書を有する同校のメディアセンターは、生徒たちがいつでもすぐ行けるよう校舎の真ん中に設置されており、明るく開放的な空間となっています。
入口付近のイベントコーナーには、リオデジャネイロ・オリンピックに選手として活躍した卒業生の写真とオリンピック関連本が並び、前を通る人の目を引いています。中へ入ると話題の本が受け付け横のラックに並び、中央展示には季節感あふれる飾りとともに推薦本が並んでいます。ところどころに、生徒たちの好奇心を刺激する司書の先生方の工夫がうかがえます。吹き抜けスペースにはDVD鑑賞コーナー、3階には生徒たちが落ち着いて自習できるよう広い机が並んでいます。

司書の先生方は「調べ学習」で各教科の先生と連携して資料本を取り寄せたり、生徒の個人的なリクエストにも対応してくれる心強い存在です。
「ひたすら読書をする子、自習をする子、休み時間に来てぼーっと座っているだけの生徒もいますが、よっぽど疲れてるんでしょうね(笑)、『悲しい気持ちなんだけど、元気になる本はありますか?』と聞かれたときは一緒に探しました。『全集を読破したよ!』と報告してくれた生徒もいました」(山崎先生)
メディアセンターは生徒たちの心が集まる場所でもあるようです。司書の先生方は、そんな生徒たちを温かく見守っています。

 

※上記はNettyLandかわら版の抜粋です。全容はこちらをご覧ください。

昭和学院中学校
[学校HP]http://www.showa-gkn.ed.jp/js
〒272-0823 千葉県市川市東菅野2-17-1 Tel.047-323-4171
最寄駅/
JR総武線・都営新宿線「本八幡駅」・京成本線「京成八幡駅」徒歩15分。「本八幡駅」「京成八幡駅」・JR武蔵野線「市川大野駅」・北総線「東松戸駅」から京成バス「昭和学院」。

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